絵師の徳田智子です。絵の道に入って早半世紀。水彩画の素晴らしさをお伝えして30年になります。
チューリップのお花畑に行った時、その数と種類の多さに圧倒されました。「なんてすごいんだ!」と感動して、その時は写真を撮るだけで終わってしまいましたが、その後、何度も訪れるようになり、スケッチもするようになりました。本日は、その時の感動を思い出しながら、皆様と一緒に描いていきたいです。

今回は、花壇の王様とも言える「チューリップ」を初心者の方でも簡単に描ける方法をお伝えします。
チューリップは「花」「茎」「葉」と構造はとてもシンプルな花ですが、透明水彩で描こうとすると「形が単調になる」「花がベタ塗りになる」「立体感が出ない」など、初心者には難しいかもしれません。
しかし、結論から申し上げますと
以下の3つのポイントを押さえることで初心者でも上手く描くことができます。
- 下描きで「チューリップの形」をしっかり捉える
- 水彩画の特徴ある技法を使う(ウェット・イン・ウェット、重ね塗り、ドライブラシ)
- 失敗しやすい三大失敗ポイントを回避する
以上です。
では早速、詳しく解説して参りましょう。
目次
水彩画でチューリップを描く前に準備するもの
これまでも、水彩画入門の記事で紹介してきましたが、大切なことなのでここでもお伝えさせていただきます。この前準備無くして「チューリップの花」は上手く描けませんので、悪しからずご了承ください。
水彩画初心者に必要な道具について
水彩絵の具には、透明水彩と不透明水彩があります。
ここでは透明水彩絵の具を使っての描き方をお伝えしていくので、透明水彩絵の具が必要です。
透明水彩絵の具は、描いた上に、別の色で描くと下の色が透けて見えるのが特徴です。
透明水彩絵の具と不透明水彩絵の具の違いについてはこちらの記事もお読みください。
今回のお花の描き方では、チューブタイプの絵の具より固形タイプ(パンタイプ)の絵の具の方が使いやすいかもしれません。
なぜなら、少量の絵の具と筆に含む水分量で調節して描いていく方が、お花のみずみずしさや立体感が表現しやすく、また、失敗の確率も格段に下がるからです。
初心者が陥りやすい3大失敗を参考にしていただくとわかりやすいですね。⬇️こちらをタップ
初心者におすすめの絵の具について、詳しくはこちらの記事もお読みください。
すでにチューブタイプの絵の具を購入済みの方は、上の記事で紹介しているようにご自身でパレットに絵の具を出して乾かして、固形タイプのように作成することもできます。
市販のパレットにホルベインの透明水彩絵の具、12色を使用

筆者も使用していますが、とても便利ですよ。何より、絵の具の無駄がありません。
この場合、市販のパレットが必要ですね。細かい部分と大きな部分に分かれたものが使いやすいですね。

筆は、細いものから太いものまで、数本ある方が描く上で便利です。

動物毛の高級なものを揃えるよりも、初心者ならば、思い切ってナイロンなどの合成繊維製の筆をおすすめします。ホームセンターなどでも販売されていて購入もしやすいです。
筆者はアクリル絵の具のところでも紹介しておすすめしていますが、サクラクレパスのネオセブロンがお気に入りです。子どもが使っても少々のことではへこたれないタフさと合成繊維毛のしなやかさが水彩絵の具を使用するときにでも、柔らかいタッチが得られます。
筆洗は、筆を洗うところと、綺麗な水をそのまま置いておくところがあると便利ですので2、3箇所区切りがあるものを選ぶといいですね。

こちらは学童用の絵の具セットに入っていた筆洗です。大きくて使いやすいですよ。
ひと通り、描画に必要な道具はこれで揃いましたね。
他に、ティッシュペーパーや雑巾(いらない水分を拭き取るときに使う)やスポイドなどもあれば便利ですね。
水彩画に向いている支持体
次は、支持体(何に描くか)です。
水彩画に向いている支持体は水彩紙です。
ひと言で表現するならば、水彩画のために開発された紙だからです。
- 長期保存に適した中性紙
- 水彩画のテクニックの「にじみ・ぼかし」がしやすい
- 美しい発色が生まれる
- 表面の凸凹が豊富で素早く水を吸収してくれる
などなど、数え上げればきりがありません。
その理由は、こちらの記事で詳しく説明しています。ご一読ください。
初心者なら、絵の具の色がよくわかるホワイトの水彩紙をおすすめします。
今回は写真を見ながら机の上で描くのでブロックの水彩紙にすると便利です。
ブロックの水彩紙とは、四方がのりづけされているタイプの水彩紙です。
水張りの必要はもなく、上から順番に使っていきます。
1枚描き終えたら、カッターで外します。
机の上で描くなら、F4サイズより小さめがいいでしょう。

ホルベインのclester<クレスター>は、バランスが良く、初心者にはもってこいの水彩紙です。筆者も初心の頃から愛用しています。紙色も白過ぎず自然な白さが気に入っています。
また、水彩紙の厚さは200g前後が初心者には扱いやすく、中目(コールドプレス)は適度な凸凹が筆のタッチを生かしてくれるため、にじみやぼかしが綺麗に出ます。
さあ、道具は揃いました。いよいよチューリップを描いていきましょう。
オーソドックスなチューリップ、2色以上が混じったチューリップ、花びらの形が特徴的なチューリップ、この3種類を描きたいと思います。
【水彩画】チューリップの描き方 花の特徴を捉える
【画家からの一言】チューリップは温度で一気に開花します(だいたい17℃ぐらい)。なので室温を少し下げて、ゆっくり描ける環境を作るのがおすすめです。筆者も暖房をつけっぱなしで描き始めて、描いている最中に開花!構図が崩れて困った経験があります。
まず、3種のチューリップの特徴を整理し、アイデアスケッチをしていきましょう。
この時は、クロッキー帳を使用してご自身がどのように描きたいかを描(書)き出します。
言葉で書き込みもいいと思います。
筆者はいつもキャンソンのクロッキーブックを使用しています。
使う鉛筆は、3Bや4Bなどの柔らかい鉛筆を使用しましょう。
なるべく消しゴムは使わないでください。
ゴシゴシ消すと紙を傷つけてしまいます。特にクロッキー帳の紙は薄くて破れやすいです。
どうしても使う時は、柔らかい消しゴムを使い優しく消してください。
筆者はサクラクレパスの消しゴムを愛用。柔らかくてよく消えます。

チューリップの描き方 ① オーソドックスタイプの特徴
いわゆる、皆さんがイメージする普通のチューリップです。
花びらは単色で、茎はスッと長く、葉っぱもすらっと伸びているものです。
花屋さんで売っているお花のイメージですね。

花の形は、「だ円形」ですね。よく見ると先は、ちょっととんがっています。
また、初心者の方は特に「花と茎のつき方」に注意!自然に花全体が茎の上にのっているイメージで描いてください。茎の線はまっすぐではなく柔らかいカーブで描きましょう!

参考にしたのは白色のチューリップでしたが、オーソドックスなカラーといえば「赤!」っという独断と偏見で、赤色を使ってみました。

実際に水彩紙に描いてみましょう。

今回使用した色は、バーミリオン ヒュー、クリムレーキ、オペラ、ブライトローズです。
前の2色は12色セットに入っているものですが、オペラとブライトローズは単色で購入しました。
桜のある風景の描き方でも桜の花に使用しています。詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
次は、白色のチューリップです。
白色のチューリップは、水彩画では「白色の絵の具」は使わず、水彩紙の白で「白い物体」を表現するため、水彩絵の具で描くのは影の部分です。

今回使用した色は、12色セットに入っているコバルトブルー ヒューとプルシャンブルーです。
初心者の方には少しハードルが高いなあと感じる時は、お好きな色で描いていきましょう!
チューリップの描き方 ② 花びらの色が濃淡もしくは2色以上の混色タイプの特徴
濃淡だけもありますが、全く違う色の混色(ミックス)のものもあります。
花びらの外側が薄く白っぽくなっています。

こちらは黄色と赤のミックスです

花びらの形はどちらもよく似ています。

どちらも、1枚の花びらの中に「2色の混色(カラーミックス)」や「色の濃淡」がありますね。この特徴を描き分けられればリアリティのあるチューリップが描けますね。

黄色と赤の混色タイプと1色の濃淡も色をつけてみました。今回は覚書の方にも着彩しました。濃淡のチューリップは、紙の白さを少し残すことで、より一層、チューリップの花の立体感が出ています。
実際に水彩紙に描いてみましょう。
まずは、黄色+赤色のチューリップの描き方です。

今回使用した色は、12色セットに入っている、パーマネントイエローライトとバーミリオン ヒューです。
【画家からの一言】水彩画の魅力を存分に発揮するには、何度も色を重ねるのではなく、なるべく描く回数を減らし、生き生きとした雰囲気を損ねないことも重要です。しつこく描き過ぎて画面が濁ってしまい、結局初めから描き直すことが何度もありました。描き過ぎには要注意です!
続いて「1色なんだけど濃淡がある」チューリップの描き方です。

今回使用した色は、単色で購入したブライトローズとオペラです。
チューリップの描き方 ③ 花びらの形が特徴的なタイプの特徴
こちらは、花びらの形に特徴があります。
花びらの先の方がきゅっと絞られてとんがっています。
全体的に、上に向かって広がっています。この形の特徴を表現できれば完璧ですね。
花びらの形だけでなく、葉っぱの形も、「ウネウネしたカーブ」が特徴的です。

筆者は「逆さベル型」と命名してアイデアスケッチに書き込みました。

花の形をわかりやすい形に置き換えると、花を上手く捉えられますね。これで、特徴のあるチューリップも描きやすくなりました。

花の描き方です。

いかがですか?花びらの特徴は捉えられましたか?
花びらで使用した色は、セットに入っている、パーマネントイエローライトとバーミリオンヒュー、単色で購入したレモンイエローです。
葉っぱの描き方です。

葉っぱで使用した色は、セットに入っているパーマネントグリーン、ビリジャン ヒュー、影の部分にコバルトブルーです。
それぞれの葉っぱのフォルムを捉えられれば、着彩は応用できます。
難しいと思いますが、何度も挑戦して納得のいくまで描き続けてください。
【水彩画】チューリップの描き方で押さえておきたい水彩画の技法
水彩画の技法にはたくさんの種類がありますが、ここでは代表的な技法で実際にチューリップを描くときに必要な3種類を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
そのほかの水彩画の技法について詳しくは、こちらの記事もお読みください。
チューリップを描く水彩画技法 ①:ウェット・イン・ウェット(にじみ・ぼかし)
ウェット・イン・ウェットは、下地や先に塗った色が乾かないうちに、上から別の絵の具を塗り重ねる技法です。
絵の具が紙の上で自然に馴染み、幻想的な混色を生み出せる透明水彩の代表的なテクニックです。
これは、どのチューリップのどの部分にも(花びらに、葉っぱ、茎)活用できます。
特に、2色の混色(ミックス)や、1色ですが濃淡のあるチューリップには欠かせない技法です。

ポイント☝️:たっぷりの綺麗な水を筆に含ませる。多過ぎた時はティッシュなどで拭き取る。
チューリップを描く水彩画技法 ②:重ね塗り
特に難しい技法ではありませんが、基本を忠実に守ることで水彩画の「みずみずしさ」や「透明感」を表現できます。
そしてこの重ね塗りの技法は、オーソドックスなチューリップや花びらに特徴があったチューリップにも広く活用できます。
この技法は、パレットで色を混ぜ合わせるのではなく
画面上で色の層を作ることで、透明感や奥行き、複雑な深みを生み出すことができる技法です。
手順はこちらです

ポイント☝️:完全に乾いてから、次の色を重ねること
花も茎も、上記の2つの技法でバッチリ描けます。
もう一つ、知っていると便利なのがドライブラシです。
チューリップを描く水彩画技法 ③:ドライブラシ
筆跡のかすれを生かして描く技法のことです。
白色のチューリップの影の部分や、葉っぱの部分などに効果的に使うと質感が高まります。

ポイント☝️:筆の水分を充分に拭き取る。必要な時は別の紙で試し描きしてから。
この3つの技法を使いこなせば、初心者でも、簡単に描けますね!
チューリップの描き方で初心者が陥りやすい3大失敗
初心者が陥りやすい三大失敗をまとめました。解決方法もありますので、ご自身の失敗と向き合ってじっくり検証してください。
| 失敗の症状 | 原因 | 解決・修正のコツ |
|---|---|---|
| ① 色がにじんで形がボヤける | 水が多すぎる、または紙が乾ききる前に色を重ねている。 | 筆の水気を拭き取る:筆をティッシュ等で軽く拭き取ってから絵の具を含ませる。 完全に乾いてから色を重ねる。 |
| ② ベタ塗りになり立体感がない | 濃淡(グラデーション)がなく、全体を同じ色で塗ってしまっている。 | 白(紙の地)を残す:花びらの先端や光が当たる部分はあえて塗らない。薄い色から塗り始める。 ウェットインウェットの技法を使う。 |
| ③ 濃くなりすぎて修正できない | 絵の具を取り過ぎて濃すぎる。もしくはゴシゴシ擦りすぎている。 | 絵の具を吸い取る:失敗した部分は、きれいな濡れていない筆で水を吸い取る。筆に綺麗な水を含ませて画面に置き、ティッシュで軽く押さえて色を抜く。 |
今回、固形絵の具、もしくは、ご自身で作成した固めた絵の具を使用してくださった方は
③濃くなり過ぎて修正できない
は、事前に回避されています。それでも、濃くなりすぎる時は、絵の具をつける前の筆の水分に注意すれば問題ありません。
チューリップの描き方 まとめ
いかがでしたか?花壇の王様「チューリップ」は上手く描けましたか?
いろいろな種類、いろいろな色がありましたが、
以下の3つのポイントを押さえること上手く描くことができましたね!
- 下描きで「チューリップの形」をしっかり捉える
- 水彩画の特徴ある技法を使う(ウェットインウェット、ドライブラシ、重ね塗り、等)
- 失敗しやすい三大失敗ポイント(ぼやけ、ベタ塗り、絵の具の塗り過ぎ)を回避する
単体のチューリップが描けるようになったら、チューリップ畑も描いてみたくなりませんか?
こちらの記事には、花のある風景ー特にチューリップ畑の描き方を丁寧に説明しています。ご興味のある方はぜひこちらお記事も併せてお読みください。
本日は最後まで記事をお読みいただき感謝です。
ありがとうございました。













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