水彩とアクリル絵の具は混ぜてもいい?初心者向け正しい使い方を解説

絵師の徳田智子です。絵の道に入ってはや半世紀。アクリル絵の具を愛用して5年の歳月が流れました。

背景を透明水彩のウェットインウェットの技法で描き、乾燥後、上からアクリル絵の具でもふもふの猫ちゃんを描きました。

アクリル絵の具と水彩絵の具を一緒に使いたいけれど、2つを混ぜて使っても問題ないのか不安に思っていませんか?

実は、この2つの絵の具を直接混ぜて使うのは、画材の性質上おすすめできません

しかし、それぞれの特性を理解して、正しい手順で「併用」すれば、初心者でも失敗せずに魅力的な作品を作ることができます

方法可否その理由
パレットで直接混ぜるNG分離・ひび割れ・剥離
水彩→アクリルの順で重ねるOK下地を保護し表現が広がる
アクリル→水彩の順で重ねるNG弾いて定着しない

この記事では、混ぜてはいけない理由から、表現の幅を広げる正しい重ね塗りのテクニックまで分かりやすく解説します。

アクリル絵の具と水彩絵の具は「混ぜる」のはNG!初心者が知って欲しい理由

アクリル絵の具・水彩絵の具は【成分の違い】で、完全には混ざらない

アクリル絵の具と水彩絵の具は、どちらも水で薄めて使うため一見似ているように感じられますが、絵の具の色素(顔料)を固着させるための「固着剤(メディウム)」という成分が根本的に異なります。アクリル絵の具には「アクリル樹脂」、水彩絵の具には「アラビアゴム」という水溶性の天然樹脂が使われています。

アクリル絵の具については、ホルベインのサイトも参考になさってください。

色材の解剖学⑲ アクリル絵具【基礎編】

アクリル絵の具の使い方について詳しくはこちらの記事も!

【初心者向け】アクリル絵の具の基本的な使い方と楽しく描くコツ

水彩絵の具については詳しくはこちらの記事を!

【完全版】水彩画の絵の具の種類とは?自分に合う選び方を徹底解説

これらは化学的な性質が異なるため、パレットの上で直接混ぜ合わせても、分子レベルで綺麗に混ざり合うことはありません。

直接パレットで混ぜると起こる3つの失敗リスク(分離・ひび割れ・定着不良)

成分が異なる絵の具を無理に混ぜて使うと、乾いていく過程で様々なトラブルが発生しやすくなります。

その1:分離

代表的な失敗リスクとしては、絵の具が均一にならずに弾き合ってしまう「分離」が挙げられます。アクリル絵の具のアクリル樹脂と水彩絵の具のアラビアゴムは、ベースとなる糊(バインダー)の成分が大きく異なります。パレット上で混ぜ合わせた際に、水と油のように反発し合って絵の具が均一に混ざらず、ダマになったり分離したりして綺麗な色を作ることができません。

その2:ひび割れ(クラック)

乾燥の数日後に「ひび割れ」が起きるリスクも非常に高いです。原因は、アクリル樹脂の乾燥スピードと、水彩絵の具の乾燥メカニズムの違いにより、塗膜の収縮率に大きな差が生じるためです。例えば、水彩絵の具の層にアクリル絵の具を重ねたり混ぜたりすると、乾燥時に表面が引っ張られ、絵の具の層がパリパリと割れてしまう現象が発生します。

その3:定着不良(剥離)

さらに、乾燥したあとに画面がペリペリと剥がれてしまう「定着不良」も起こりやすいです。アクリル絵の具は完全に乾くと耐水性(水に溶けない膜)を形成しますが、水彩絵の具は乾燥後も水に溶ける性質を持ちます。 この全く異なる性質の層を混ぜてしまうと、アクリル本来の強い接着力が阻害され、時間の経過とともに絵の具の層が画面からポロポロと剥がれ落ちる原因になります。

定着不良とひび割れの例:麻素材のキャンバスに水彩絵の具とアクリル絵の具を混ぜて描写。

せっかく描いた大切なイラストや絵画を長く綺麗に保存するためにも、直接混ぜる行為は絶対に避けましょう。

【体験談】知らずにアクリルと水彩を混ぜて大失敗したリアルな事例

初心者のうちは、「どちらも水で薄める絵の具だから大丈夫だろう」と思って混ぜてしまうケースが多々あります。

しかし、実際にやってみると、乾いたあとの手触りや見た目の美しさが大きく損なわれる結果になってしまいます。

ホルベインの透明水彩絵の具・ブライトローズにホルベインのアクリル絵の具の白色を混ぜました。綺麗な色になるはず!っと、何の知識もなくやってしまいました。残念ですが、乾いたらザラザラした手触りになってしまいました。

画材の特性を無視して感覚だけで混ぜてしまうと、後から修正するのが非常に難しくなり、時間も画材も無駄になってしまいます。

混ぜるのはダメでも「併用」はできる!初心者向け正しい使い方と手順

パレットの上で直接混ぜ合わせることはNGですが、1つの作品の中に両方の絵の具を取り入れる「併用(重ね塗り)」は可能です。

水彩の美しい透明感と、アクリルの力強い不透明感を組み合わせることで、表現の幅をぐっと広げることができます。

ただし、併用を成功させるためには、色を重ねる順番に関する「鉄則」を守らなければなりません

初心者が迷わずに美しい画面を作るための、正しい使い方と手順を詳しく解説します。

鉄則:必ず「水彩絵の具」を塗った上に「アクリル絵の具」を重ねる

絵の具を併用する際の一番の鉄則は、まず下に「水彩絵の具」を塗り、それが完全に乾いた上から「アクリル絵の具」を重ねることです。

ホルベインの12色セットのコバルトブルー ヒューを使ってウェットインウェットの技法で湖をイメージして描きました。

水彩絵の具は水に溶ける性質を持ちますが、その上からアクリルを重ねることで、アクリルが被膜となって下の水彩を優しく保護してくれます。

この順番を守れば、下の水彩の淡くにじんだ美しいウェットインウェットの技法を活かしつつ、上にくっきりとしたディテールを描き込むことができます。

背景を水彩でふんわりと描き、主役のキャラクターやモチーフをアクリルで力強く描くといった表現に最適な手順です。

逆は絶対にNG!アクリルの上に水彩を塗ってはいけない理由

逆に、アクリル絵の具を先に塗り、その上から水彩絵の具を重ねるという順番は絶対にやってはいけません。

アクリル絵の具は乾くと「耐水性」のプラスチックのような膜(樹脂膜)へと変化します。

ツルツルとしたアクリルの樹脂膜の上からは、水溶性の水彩絵の具は水分を弾いてしまい、全く画面に定着しません。

アクリル絵の具で描いた上に透明水彩絵の具で描きましたが、弾いてしまって上手く描き込むことができません。

仮に無理やり塗ったとしても、触ると簡単にポロポロと剥がれ落ちてしまうため、この順番での重ね塗りは完全に不可能です。

鉄則を守って描いたときには、素晴らしい画面が出来上がります。水彩の背景をしっかり乾燥させ、その上から水分少なめのアクリル絵の具で描くと、滲むこともなく、また、水彩絵の具の部分の色もしっかり隠されて、表現の幅が広がります。

アクリル絵の具と水彩絵の具の併用(重ね塗り)でよくある質問(Q&A)

ここからは、皆さんが疑問に思う質問に答えていきたいと思います。

Q. アクリルガッシュと透明水彩なら混ぜても大丈夫ですか?

A.いいえ、アクリルガッシュであっても、透明水彩や不透明水彩(ポスターカラー等)と直接混ぜるのはNGです。

アクリルガッシュも基本成分は「アクリル樹脂」であるため、水彩絵の具のアラビアゴム成分とは混ざり合いません。

アクリル絵の具とアクリルガッシュの違いについて詳しくはこちらを⬇️

アクリル絵の具とアクリルガッシュ違いは何?初心者におすすめは?

ただし、これも先ほどと同様に「水彩絵の具の上にアクリルガッシュを重ねて塗る」という併用方法であれば問題なく使えます。

ガッシュのマットな質感を活かしたい場合も、混ぜずに必ず重ね塗りのルールを徹底してください。

Q. 下の水彩絵の具が完全に乾いていれば、アクリルを重ねても滲みませんか?

A.下の水彩絵の具が完全に乾いていれば、上からアクリル絵の具を重ねても基本的には大きく滲むことはありません

ただし、上のアクリル絵の具を過剰な水分で薄めすぎて、筆で何度も強くこするように塗ってしまうと、下の水彩が溶け出して濁ることがあります。

上から重ねるアクリル絵の具は、やや水分量を少なめにして、適度な厚みを持たせてサッと優しく置くように塗るのが滲ませないコツです。

不安な場合は、本番の画面に塗る前に、いらない紙などで一度重ね塗りのテストを行ってみることをおすすめします。

Q. パレットの共有は可能ですか?また、筆の共用は可能ですか?

A.パレットについては、共有は可能ですが、そのまま同じ場所を使い回すのはNGです。

  • パレットのリスク:アクリル絵の具は一度乾くと耐水性になり、水に溶けなくなります。水彩絵の具のスペースにアクリルが残っているとパレットが使えなくなります。
  • 対処法:アルミやプラスチック製のパレットを使い、アクリル用と水彩用でスペースを明確に分けるか、アクリル絵の具で使用した部分を使用後すぐにティッシュなどで拭き取りましょう。

筆者は透明水彩絵の具は普通のプラスチック製のパレットに各色をでして乾燥させた「自家製固型絵の具」にしています。

また、アクリル絵の具を使う時は、卵パックを用意して「リサイクルパレット」として活用しています。

これなら、アクリル絵の具が乾いてしまっても気にする必要がないので、安心して描くことに集中できます。詳しくは、こちらの記事のパレット編を参考にしてください。

水彩画初心者の道具選びー基本中の基本とラクして楽しむ方法を徹底解説

A.筆について共用自体は可能ですが、使用するたびに丁寧に洗う必要があります

  • 筆のリスクアクリル絵の具は樹脂が含まれているため、筆に残ったまま乾燥すると毛が固まって使えなくなります。また、アクリル用は硬いナイロン筆が多く、水彩用は柔らかい毛(馬やリスなど)が多いため、適した筆が異なります。共用しないことをおすすめします。
  • 対処法:水彩の筆をアクリルで使う場合は、絵の具をこまめに洗い流すか、アクリル用の筆(ナイロン製)を別途用意するのがおすすめです。

まとめ:アクリル絵の具と水彩絵の具は混ぜるより併用が正解

背景を水彩絵の具のウェットインウェットの技法で描いてから、猫をアクリル絵の具で描きました。この猫の特徴のふさふさの長い毛並みをアクリル絵の具で繊細に描きました。透明水彩絵の具では白い毛並みが描けませんので、このようにアクリル絵の具を併用することで表現できます。

アクリル絵の具と水彩絵の具は、パレットの上で直接「混ぜる」のは成分が異なるため絶対にNGです。

しかし、必ず「水彩絵の具を先に塗り、その上からアクリル絵の具を重ねる」という正しい順番を守れば、安全に併用できます。

それぞれの画材が持つ独自の美しさやメリットを正しく理解することは、絵の上達への第一歩となります。

ルールを守って上手に使い分け、あなたの作品の表現力をさらに自由に、豊かに広げていきましょう。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

アクリル絵の具と水彩絵の具の違いについてもっと知りたい方はこちらの記事も参考になさってください。

アクリル絵の具と水彩絵の具の違いとは?50年の画歴で徹底比較

ありがとうございました。感謝です。

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