こんにちは、絵を描いて早半世紀、絵師の徳田智子です。
アクリル絵の具を愛用して5年になります。

本日は、混乱しがちなアクリル絵の具とアクリルガッシュの違いについて
詳しく解説していきます。
アクリル絵の具とアクリルガッシュ、名前が似ていて違いがよくわからないとか、
どちらを買えばいいの?とか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、アクリル絵の具とアクリルガッシュの最大の違いは
「透明度」と「質感」です。
違いは、2つですが、共通点はたくさんあります。
では、順番に「自分なら、どちらを選べばいいのか」が
わかるように解説していきます。
アクリル絵の具とアクリルガッシュ、何がどう違うのか。
まとめてみました。
| 特徴 | アクリル絵の具 | アクリルガッシュ |
|---|---|---|
| 透明性 | 透明〜半透明 | 不透明 |
| 乾燥後つや | あり(ツヤツヤ) | なし(マット・粉っぽい) |
| 隠蔽力(下地をかくす度合い) | 低い(下の色が透ける) | 高い(下地を完全に隠す) |
| 主な用途 | 絵画・多用途 | イラスト・デザイン |
目次
アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い①透明度・発色の差を詳しく解説
透明度ってなんでしょう?
重ね塗りをして、下の色が透けて見えるかどうかです。
透明度が高いということは、下の色が透けてよく見えるということです。
なので、何層も重ね塗りをすることができ、色に深味が生まれます。
アクリル絵の具の透明感はどこから生まれるのか
では、アクリル絵の具の透明感はどこから生まれるのでしょうか?
主に「乾いた時のバインダーの透明化」から生まれます。
アクリル絵の具のバインダーは、乾燥すると透明になります。
バインダーとは?:顔料を定着させ、描画画面に安定した塗膜を形成させる成分のこと。アクリル絵の具に使われているのは、アクリルエマルション(樹脂)というものです。
だから、アクリル絵の具は「透明度が高い」のですね。
アクリルガッシュのマット感と高い隠蔽力の理由
一方、アクリルガッシュは、乾燥後はつや消しのマットな質感になります。
塗りムラが少なく均一な画面を作れます。
高い隠蔽性(隠ぺい力)があるので、黒い下地の上からでも明るい色で描けます。
その理由は!
アクリル絵の具よりも、顔料が多くアクリルエマルションが少なく配合されているからです。
その結果、顔料が多いので不透明でマットな質感になるのです。
アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い②質感の違いを詳しく解説
アクリル絵の具の艶感はどこから生まれるのか
アクリル絵の具は、乾くと表面がツルッとします。
この絵の具は、顔料(色成分)をアクリル樹脂エマルション(乳化樹脂)で包み込んで作られているので
水が蒸発すると、この樹脂が結合して透明で強度のある薄い膜を形成。
この樹脂膜が、プラスチックのようにツルッとした光沢や滑らかな質感を出します。
だから、アクリル絵の具には艶感があるのですね。
アクリルガッシュの落ち着いた質感・粉っぽさの理由
アクリル絵の具は艶がありますが、アクリルガッシュは少し粉っぽい印象です。
光を反射しない艶消し効果(マットな質感)を出すために
顔料(色素)の比率が非常に高く
相対的にアクリル樹脂(接着・光沢成分)が少ないからです。
なので、乾燥後に光沢がなくチョークのようなサラッとした
マットな仕上がりになります。
それぞれの特性をよく理解して、使い分けましょう!
アクリル絵の具とアクリルガッシュの違いを歴史から読み解く
これらの違いは、アクリル絵の具とアクリルガッシュが誕生した背景にあります。
誕生の背景を見ていきましょう!
アクリル絵の具、誕生の歴史
アクリル絵の具の歴史は浅いです。
誕生してからだいたい70年ぐらいしか経っていません。
1920〜30年代頃に巻き起こったメキシコ壁画運動で
屋外で大画面に使用できるような耐久性の高い絵具が必要になりました。
メキシコシティ 国立宮殿 壁画

それで、1940年後半頃に溶剤系のアクリル絵具が誕生しました。
この頃のアクリル絵具はシンナーなどの溶剤で絵具を溶かして描画するものでした。
そのアクリル絵の具は、使いにくく危険性もありました。
そこで、1955年に水で溶かして使う、安全な水性のアクリル絵具が開発されました。

1955年に ヘンリー・レビソンが水性エマルションタイプ「リキテックス」を開発
こちらの記事にもアクリル絵の具の誕生の歴史(メーカー別)があります。
アクリル絵具は野外で描くことを目的として作られたため、
耐水性があり、耐久性が高く、透明感のある画材となりました。
どこにでも使える、タフな相棒ですね!
アクリルガッシュ、誕生の歴史
不透明アクリル絵の具である「アクリルガッシュの歴史」についても簡単に触れておきます。
水性のアクリル絵の具は大変人気ではあったのですが
1955年当時、ポスターカラーなど不透明でマットな質感に慣れていた
デザイナーやイラストレーターには
アクリル絵の具特有の透明でツルッとした質感が好まれませんでした。

そのため、デザイナーやイラストレーターに好まれるような
不透明でマットな質感をもつ絵の具が後に開発されました。
それが、不透明アクリル絵の具、つまり、アクリルガッシュです。
アクリルガッシュも耐水性ですが、普通のアクリル絵の具とは違い、
マットな質感と不透明性、発色の良さが特徴となっています。
余談ですが、「アクリルガッシュ」はターナーの登録商標で商品名です。なので、他のメーカーでは商品名を少し変えていますね。
↑ホルベインはアクリリック(アクリラ) ガッシュという商品名です。
↑リキテックスはアクリリックという商品名です。
誕生の歴史から選択:どちらを選ぶ?
以上、アクリル画材の誕生の歴史から導き出した初心者におすすめは!
絵画的表現なら、アクリル絵の具!透明感が違います!

この桜の作品、実は最初はアクリルガッシュで描き始めたんです。
だけど、透明感が全く出なくて…。
途中からアクリル絵の具に切り替えました。
するとどうでしょう!
花びらのみずみずしさ明るさ、画面全体の奥行きが表現できました!
やはり、アクリル絵の具の透明性があってこそですね。
それとは反対に、
平面的で均一な仕上げのデザイン的表現なら、
アクリルガッシュで決まりですね!

このトラも、マットで落ち着いた感じの中にどっしりとした迫力がありますよね。
この落ち着いた感じは、アクリルガッシュならではの表現です。
アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い:表現方法の使い分け
アクリル絵の具もアクリルガッシュも、どんなものにも描けて乾きも速いので、
初心者には、どちらもおすすめです。
では、どちらがより初心者に向いているかというと…
その人が何を描きたいかによって、「使い分けてください」というのが
画暦50年の筆者の個人的独断と偏見でのおすすめです。
その理由を、順を追って説明します。
アクリル絵の具がおすすめの描き方:絵画的・重ね塗り表現
より絵画的描写を極めるときは、アクリル絵の具をおすすめします。
油絵のように塗り重ねて質感を追求することで、作品に深みが生まれます。

吹雪の情景にオーロラと冬の寒さをイメージして、アクリル絵の具を塗り重ねて深みと表減しています。
何度も上から描き加えることもでき
下の色がなんとなく影響してくるのでハーモニーが生まれます。
アクリルガッシュがおすすめの描き方:平面的・イラスト表現
より平面的でデザインっぽい仕上げを目指すなら、アクリルガッシュを!

イラストを手描きするときなどは、アクリルガッシュがおすすめです。
一度塗って、ちょっと違うなぁって思ったら
上がら重ねて塗ると下の色に左右されません。
完全に下の色は隠されてしまいます。
違いだけじゃない!アクリル絵の具とアクリルガッシュの共通点
結局、どちらを選ぶにしても
何をどのように描きたいかが重要です。
初心者だからこっちがいい!ではなく、
自分は「〇〇を描きたいのだ!」という目的に合わせて選んで欲しいのです。
ですので、兄弟のような2種類の絵の具の共通点も見ながら
あなたにピッタリの絵の具を見つけていきましょう!
アクリル絵の具とアクリルガッシュの共通点①:速乾性
どちらも、乾燥が早いです。
なので、取扱注意です。特に、筆の扱いは重要です。
初心者の方はこちらを読んで研究してください。
アクリ絵の具について描いていますが、アクリルガッシュでも同じことが言えます。
アクリル絵の具とアクリルガッシュの共通点②:乾燥後は耐水性
両者ともに乾燥後は、耐水性になります。
使う道具は、アクリル絵の具、アクリルガッシュともに
乾燥後の耐水性について熟慮する必要があります。
特に、「筆」は要注意!こちらの記事も参考にしてください。
アクリル絵の具とアクリルガッシュの共通点③:何にでも描ける
どちらの絵の具も、紙、木、布、金属、プラスチックなど
様々な素材に描けるという共通のメリットがあります。

どちらも大変便利です。
筆者も木の板やキャンバスボード、布など色々な素材に描いてきました。
どちらの絵の具もしっかり定着してくれますよ!
最初は画用紙から始めて、慣れてきたら素材を変えてみるのも楽しいです。
ぜひ、挑戦してみてください!
アクリルガッシュを使うときの注意点:ひび割れを防ぐコツ
アクリルガッシュは、アクリル絵の具よりも、アクリル樹脂の配合が少ないため
厚く盛るとひび割れが起きやすいです。気をつけてください。
ポスターカラーのように薄く均一に塗るのが基本です!
この基本を守ることで、ほぼ、ひび割れは防げます。
しかし、アクリル絵の具を使っていると思い込んで
アクリルガッシュを使って、石垣の厚塗りをしてしまったときは大惨事でした。
乾いたかなあって、見てみると!ガタガタにひび割れていました。
モデリングペーストも使わず、絵の具だけで描いていたので大失敗!
ひび割れを取り除いて、もう一度描き直しました。ショックでした。

でも、この経験があったからこそ、必ず薄塗りにしています。
皆さんも気をつけてくださいね!
この2つの絵の具、名前は似ていますが全く違う絵の具です。
もしも、アクリルガッシュで、どうしても厚塗りしたいときは
専用のモデリングペーストを使いましょう。
リキテックスはこちら
ホルベインはこちら
アクリル絵の具、アクリルガッシュ、違いは何?どちらを選ぶ まとめ
初心者も、久しぶりの方も、ベテランの方も、
アクリル絵の具?それともアクリルガッシュ?どちらを選べばいい?
と迷ったら。
「風景画が好き!」とか、「静物画描きたい!」など
絵画系の方にはアクリル絵の具をおすすめします。
油絵風にも、水彩画風にも描け、自由自在に描くことができます。
いやいや、「クールなイラストやポスターみたいな平面的な表現が好み!」
そんなイラスト・デザイン系の方にはアクリルガッシュをお勧めします。
初心者だから、「アクリル絵の具がいい」とか「アクリルガッシュの方がいい」ではなく
自分は「こういうふうに描きたい!」ということを明確にしてから
どちらにするか決めてください!
そうすれば、失敗はありませんので!
また、アクリル絵の具とアクリルガッシュは
混ぜて使っても大丈夫です!これは便利ですね!
参考までにホルベインのサイトを紹介しておきます。
本日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
感謝です。
アクリル絵の具の具体的な使い方はこちらで詳しく解説しています!
ぜひ合わせてご覧ください。
楽しんで描きましょう!










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