こんにちは、絵師の徳田智子です。絵の道に入ってはや半世紀。
日本人絵師として日本の文化について広く世界に発信していきたいと思い、伝統的な美術品でもある「掛け軸」についてお伝えしています。
近年、和室のインテリアとして掛け軸を自分で作りたいと考える方が増えています。
実は掛け軸は、専門店に高額な費用を払わなくても、100均で手に入る材料を使って自宅で手作りすることが可能です。
この記事では、掛け軸の基本的な作り方を7つのステップに分けて、材料選びから仕上げの重りづけまで具体的に解説します。
さらに、床の間がない部屋での飾り方や、掛け軸を吊るすための矢筈(やはず)まで100均素材で作る方法もあわせて紹介します。
読み終える頃には、思い出の絵や書、手ぬぐいなどを使って、世界に一つだけの掛け軸を自分の手で完成させるイメージがはっきりと掴めるはずです。

掛け軸を100均グッズで手作りできる理由
この章では、掛け軸を自作する前に知っておきたい「表装」と「仮巻き」の違いと、100均で揃えられる材料の全体像を解説します。
まず仕組みを理解することで、次の章の実践ステップがぐっとスムーズになります。
表装と仮巻きの違いとは
掛け軸作りには大きく分けて「本格的な表装」と「簡易的な仮巻き」の2種類の方法があります。
表装は裏打ちや糊付けなど専門的な工程を含む本格的な仕立て方です。
一方、仮巻きは布や紙の台紙に作品を貼り付けるだけの簡易的な方法で、初心者でも短時間で仕上げられます。
100均の材料を使う場合は、道具や技術のハードルが低い仮巻きの方法が向いています。

100均の材料だけで作った掛け軸:紐、和紙風の紙、紙筒、クリアボール、天然石10個
100均で揃う掛け軸作りの材料一覧
仮巻きの掛け軸作りに必要な材料は、その多くを100均ショップで調達できます。
具体的には、台紙になる布(手ぬぐいや風呂敷など)や丈夫な紙、軸になる木製の丸棒や紙の筒、吊るすための紐、そして重り代わりになるビーズ(天然石)や木製パーツなどです。
これらは100円ショップの手芸コーナーやインテリアコーナーに揃っていることが多く、材料費を抑えながら本格的な見た目に仕上げられます。
材料をすべて100均で揃えれば、数百円程度で掛け軸作りを始められる点が大きな魅力です。
筆者の近くのダイソーで揃えました


掛け軸の作り方【7ステップで解説】
ここからは、実際に掛け軸を手作りする手順を7つのステップに分けて詳しく説明します。
道具の準備から仕上げの重りづけまで、順番通りに進めれば初めての方でも迷わず完成させられます。
STEP1:表装か仮巻きかを決める
最初に、本格的な表装にするか、100均素材を使った仮巻きにするかを決めます。
初めて掛け軸を作る場合は、失敗しても材料費の負担が少ない仮巻きから挑戦するのがおすすめです。

慣れてきたら、本格的な裏打ちを施す表装に挑戦するという段階的な進め方もできます。
STEP2:必要な道具・材料を準備する
仮巻きで作る場合、台紙用の布、バーベキュー用のしっかりした竹串(台紙の上用)、丸棒1本(台紙の下用)、紐、両面テープまたは速乾ボンド、はさみを用意します。
木工用ボンドは乾燥に時間がかかるため、当日中に仕上げたい場合は「速乾タイプの布用ボンド」や「速乾ボンド」を選ぶことが重要です。
丸棒は100均のすだれ棒やカーテンレールの端材などで代用できるものも多く、園芸コーナーや日曜大工コーナーもあわせてチェックすると選択肢が広がります。
ダイソーだと「アウトドアコーナー」か、「キッチン用品コーナー」にあります。バーベキュー用のしっかりした竹串(台紙の上用)

また、「電気コーナー」の配線カバーも丸棒の代わりに掛け軸に使用できます。これだと、上用にも、下用にも使用でき、2〜3本入りなので大変お得です。

配線カバーを使った様子

STEP3:台紙にする布や紙を選ぶ
台紙には、手ぬぐいや風呂敷、和紙など掛け軸らしい風合いのある素材を選びます。
台紙の色や柄は、貼り付ける作品の雰囲気を引き立てる色を選ぶことが仕上がりの美しさを左右します。
このような「ハギレ」が手芸コーナーで発見できれば最高ですね。

たとえば墨一色の書であれば、生成りや薄いグレーの台紙にすると文字が引き立ちます。

今回は 100均で上の写真のような丈夫な紙(和紙っぽいですが和紙ではありません)を購入しましたのでこちらを使いたいと思います。

また、リサイクルショップや古着屋などで「着物の帯」を購入してもいいですね。帯は生地がしっかりしているし、柄も「和」風なので、掛け軸の台紙として申し分ありません。
自作掛け軸の記事で「帯」を使って作りましたのでそちらも参考に☝️
STEP4:絵や文字などの作品を用意する
台紙に貼り付ける作品は、書道の作品、水墨画、写真、あるいは思い出の品などが定番です。
作品のサイズは、台紙よりも一回り小さく仕上げると、周囲に余白(縁)ができて掛け軸らしい佇まいになります。
一般的な掛け軸(三段表装など)では、作品(本紙)の大きさに合わせて、上下左右の布地(台紙部分)の比率が以下のように決まります。

- 天地『天』(てんち・てん:作品の上の部分): 最も長く取ります。
- 天地『地』(てんち・ち:作品の下部分): 天の長さの 約半分(0.5〜0.6倍) にします。
- 柱(はしら:作品の左右の両脇): 最も細く、天の長さの 約4分1(0.25倍)、または地よりもさらに細くします。
今回の台紙のサイズを25cmx80cmに設定(上下の加工分に6cm取りました)。黄金比の目安から計算すると、作品のサイズは、15cmx50cmになります。

早速、和紙をこのサイズに切って作品を仕上げましょう。

涼しげな滝の作品ができあがりました。

STEP5:台紙に作品を貼り付ける
作品の位置を決めたら、布用ボンドまたは両面テープで台紙にしっかりと固定します。
貼り付ける際は、中心から外側に向かって空気を抜くように圧着すると、シワや浮きを防げます。

版画用のバレンがあればそれを使って優しく作業してください。真ん中から端に向かって、空気を押し出してください。

薄く均一に伸ばしてから貼り付けることが大切です。

STEP6:掛け軸の上部と下部を作る
台紙の上部には、竹串を巻き込んで補強して、台紙が寄れたり曲がったりしないようにします。台紙の下には丸棒を仕込みます。
これは、紙筒を使用して少し重みを持たせることで、風鎮(ふうちん・おもり)がなくても、掛け軸本体だけで、ある程度、風に揺れずに落ち着くようにするためです。
方法は簡単。順番に作っていきましょう。

掛け軸の下の部分も、100均で調達した筒を仕込みます。

紐の長さは、飾る場所の高さに合わせて事前に調整しておくと、仕上がり後の微調整が減ります。
STEP7:重り(風鎮)を付けて仕上げる
最後に、下部の丸棒の両端に重り代わりのパーツ(風鎮)を取り付けます。重りを付けることで、掛け軸が壁に沿ってまっすぐ垂れ下がり、風などで揺れにくくなります。
こちらは本物の「風鎮」、石は、オニキスです。これは、今回の台紙には重すぎるので、こちらも100均の素材で作っていきましょう。

100均のインテリアコーナーにある木製ビーズやタッセルパーツも、重り代わりとして活用できます。
今回は、クリアボールとビーズでできたベリーを選びました。


台紙が和紙風なので、最終的にクリアボールに天然石のビーズ入れたおもりにしました。これで仮巻きの掛け軸が完成です。
順番通りに作業することで、初めてでも失敗しにくい仕上がりになります。
床の間がない部屋でも掛け軸を飾る方法
一般的な和室や洋室であっても、工夫次第で掛け軸を美しく飾ることができます。
この章では、床の間がない場合の吊るし方と、軸が長すぎる場合の調整方法を紹介します。
突っ張り棒やフックを使った簡単な吊るし方
床の間がない部屋では、突っ張り棒を鴨居や壁の間に設置し、そこに掛け軸の紐を引っ掛ける方法が手軽です。
120cm~180cmの伸縮突っ張り棒をドアの枠木から、押入れの枠木に設置


そして、その突っ張り棒に掛け軸を飾りました。

賃貸住宅の場合は、壁を傷つけない突っ張り式や粘着フックタイプの金具を選ぶと安心して設置できます。

跡が目立たないフックなら

フックは、壁の色(白)に馴染んでいます。
掛け軸の金具について、詳しくはこちらの記事を☝️
軸の長さが床につく場合の調整方法
既製の掛け軸や大きめの台紙で仕立てた場合、軸の下部が床についてしまうことがあります。
その際は、下軸を短くカットする、または紐の位置を上げて全体の丈を短く調整する方法で対応できます。

賃貸住宅でも壁を傷つけない方法で対応できる点がポイントです。
自作掛け軸について詳しくはこちらを☝️
掛け軸の飾り方について詳しくはこちら☝️
矢筈(やはず)も100均素材で自作できる
掛け軸を高い位置に掛けたり外したりする際に使う道具が「矢筈(やはず)」です。
この章では、矢筈を100均素材で自作する方法を紹介します。
矢筈に必要な100均アイテム
矢筈は、先端がY字に割れた棒状の道具で、紐を引っ掛けて掛け軸を持ち上げたり下ろしたりする際に使います。
100均で調達できる材料としては、園芸用の支柱やモップの柄、突っ張り棒などの長い棒と、洗濯ばさみやクリップ、L字金具などの先端パーツが挙げられます。

伸縮式突っ張り棒、洗濯バサミ→矢筈(やはず)の材料
テーブルライナー、紐、クリスマスの飾り、インド刺繍のリボン→掛け軸の材料

矢筈(やはず)の作り方の手順
長い棒の先端に、紐を引っ掛けられるようY字状のパーツ(今回は洗濯バサミを使用)やL字金具を取り付けます。
取り付け部分は、使用中に外れないよう接着剤とひもやテームなどしっかりと両方で固定すると安定感が増します。

天井近くまで届く長さにしておくと、高い位置の掛け軸の着脱もスムーズに行えます。
手作り矢筈、先端部


掛け軸を自作する際の注意点とよくある失敗
掛け軸を手作りする際には、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。
ここでは特につまずきやすい失敗例と、その対策をまとめます。
- 台紙にボンドを塗りすぎて乾燥後にシワが寄ってしまう
- 丸棒の長さが台紗の幅と合わず、仕上がりが歪んでしまう
- 重りを付けずに飾り、風で掛け軸が揺れてしまう
- 紐の長さを調整せずに飾り、掛け軸が傾いてしまう
特にボンドの塗りすぎによるシワは、乾燥後の修正が難しいため、貼り付け前に少量ずつ試し塗りをすることが大切です。

必ずパッケージの表示時間を守って作業を進めてください。
自作掛け軸について詳しくはこちらも☝️
自分で作るのが難しい場合はプロへの依頼も検討する
100均素材での自作は手軽で楽しい反面、仕上がりの耐久性や見栄えには限界があります。
大切な作品や長く飾りたい掛け軸については、表装の専門業者に依頼するという選択肢も検討する価値があります。
業者に依頼した場合の費用相場と納期の目安
表装業者に依頼する場合、費用は使用する裂地(きれじ)のグレードやサイズによって幅があります。
見積もりと納期を確認したうえで発注すれば、数週間から数ヶ月ほどで仕立てられた掛け軸が仕上がります。

表装代の目安は、簡易的な仕立てで約8,000円〜15,000円、本格的な和表装(手作業・京表具など)で約30,000円〜100,000円以上と、仕様やサイズにより大きく異なります。
参考までに、専門業者の一例を紹介します。
業者に頼むメリット
専門業者に依頼する最大のメリットは、裏打ちなどの専門技術によって、湿気やシワに強い長期保存向きの仕立てになる点です。
大切な書画や思い出の品を長く美しい状態で残したい場合は、プロの技術が安心につながります。

100均の素材では、「自在」は作れませんが、あるととても便利です。

作品の価値や飾る期間に応じて選択することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 100均の材料だけで掛け軸は本当に作れますか?
A. 台紙用の布、丸棒、紐、重り用のパーツなど、仮巻きの掛け軸に必要な基本的な材料の多くは100均ショップで調達可能です。

Q. 掛け軸に適した台紙の素材は何ですか?
A. 手ぬぐいや風呂敷、和紙など、厚みがありすぎず折り曲げやすい布や紙が適しています。

Q. 矢筈がなくても掛け軸は掛けられますか?
A. 低い位置であれば手だけでも掛けられますが、高い位置に掛ける場合や着脱を頻繁に行う場合は、矢筈があると安全かつスムーズです。

100均の素材でも作れますので、ぜひ「矢筈」をお使いください。

Q. 掛け軸を長期間保管する際の注意点はありますか?
A. 湿気の少ない場所で桐箱などに入れて保管し、定期的に陰干しをすることでカビや劣化を防ぎやすくなります。
タトウと桐箱、こちらは専門店で購入。サイズがあるので自作の掛け軸のサイズに合ったものを購入しましょう。

桐箱に入れるときは、天然由来の防虫剤も一緒に入れておけばより安心です。
掛け軸のしまい方について詳しくはこちらも☝️
桐箱の中には、掛け軸専用の防虫剤を入れておき、年に1〜2回(春と秋の乾燥した時期)に「虫干し」を行うと長持ちします。
【保管とメンテナンスの基本】
・力を入れずふんわり優しく巻き上げる
・湿気を避けるため桐箱+専用防虫剤を使用する
・春と秋の晴天日に年1〜2回の「虫干し」を実施する
まとめ|100均材料で世界に一つの掛け軸を
ここまで、100均素材を使った掛け軸の作り方を7つのステップで解説してきました。
台紙選びから作品の貼り付け、紐と丸棒の取り付け、重りの装着まで、特別な道具がなくても手作りできることがお分かりいただけたかと思います。


床の間がない部屋での飾り方や、矢筈の自作方法もあわせて実践すれば、より本格的に掛け軸のある暮らしを楽しめます。

本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。感謝です。
風水と自作掛け軸についてはこちらの記事を☝️
床の間のない方にはこちらの記事も参考に☝️
掛け軸の飾り方、しまい方について詳しくはこちらの記事を☝️
















