こんにちは、絵師の徳田智子です。
絵の道に入ってはや半世紀。
日本人絵師として日本の文化について広く世界に発信していきたいと思い、伝統的な美術品でもある「掛け軸」についてお伝えしています。
ご先祖様やお身内の法要にあたり、「十三仏の掛け軸を用意した方がいいのだろうか」「そもそも十三仏とはどんな仏様なのか」と迷われている方は少なくありません。

十三仏の掛け軸には、亡くなった方を極楽浄土へと導く13人の仏様の姿が描かれており、法要やお盆、お彼岸などさまざまな仏事で用いられてきました。
この記事では、十三仏の意味や由来、宗派による違い、掛け軸を選ぶ際の具体的なポイントまで、順を追って詳しく解説していきます。
読み終える頃には、ご自身の宗派や仏事の場面に合った掛け軸を、自信を持って選べるようになっているはずです。
十三仏の掛け軸とは何か
十三仏の掛け軸とは、その名の通り13人の仏様が1幅の中に描かれた掛け軸のことです。
主にお盆やお彼岸、法要の際に飾られ、先祖供養や追善供養の場で大切な役割を果たしてきました。
十三仏という13の仏様の顔ぶれ
十三仏には、不動明王・釈迦如来・文殊菩薩・普賢菩薩・地蔵菩薩・弥勒菩薩・薬師如来・観世音菩薩・勢至菩薩・阿弥陀如来・阿閦如来・大日如来・虚空蔵菩薩という13の仏様が含まれます。

それぞれが法要の場面ごとに割り当てられており、亡くなった方の追善供養を段階的に担う仏様として位置づけられています。
なぜ「13」なのか―追善供養との関係
十三仏信仰の背景には、亡くなった方が7日ごとに生前の行いを裁判で審判されるという十王信仰があります。
中国で広まった信仰で、閻魔大王をはじめとする10人の裁判官がいるとされます。

各王を仏様の化身とし、十仏と考えられました。
その後、実施される法要(七回忌・十三回忌・三十三回忌)が3つ増え、一般化しました。
こうして日本独自の信仰として十三仏信仰が室町時代にできたとされています。
つまり十三仏とは、単なる仏様の集合ではなく、追善供養の歴史的な発展の過程そのものを表した信仰体系だと筆者は捉えています。
十三仏それぞれの役割とご利益
十三仏は、初七日から三十三回忌までのそれぞれの法要にひとりずつ配当されており、亡くなった方を守り導く役割を担っています。
初七日から七七日(四十九日)、百ヵ日、一周忌から三十三回忌までの十三回の追善供養をつかさどる守護仏とされているのが十三仏です。
初七日から七回忌までを守る仏様
法要の初期段階では、不動明王(初七日)、釈迦如来(二七日)、文殊菩薩(三七日)、普賢菩薩(四七日)、地蔵菩薩(五七日)、弥勒菩薩(六七日)、薬師如来(七七日・四十九日)が順に故人を導くとされます。

四十九日という大きな節目までを、こうして複数の仏様がリレーのように見守っていく構成になっている点が特徴です。
十三回忌から三十三回忌までを守る仏様
四十九日以降は、観世音菩薩(百か日)、勢至菩薩(一周忌)、阿弥陀如来(三回忌)、阿閦如来(七回忌)、大日如来(十三回忌)、虚空蔵菩薩(三十三回忌)と続きます。

亡くなられた方は、十三の仏様に守られながら極楽浄土に導かれて成仏すると言われています。
三十三回忌という長い年月をかけて、少しずつ位の高い仏様へと担当が移っていく点にも、日本人が育んできた供養観が表れていると筆者は感じています。
十三仏の掛け軸を飾る意味と由来
十三仏の掛け軸を飾るという行為には、単なる装飾以上の意味が込められています。
十王信仰から生まれた日本独自の信仰
先述の通り、十三仏信仰は中国の十王信仰をもとに、日本で独自に発展した信仰です。

現在も信仰されており、法要で掛軸などをお飾りするほか、十三仏詣として日本各地にある十三仏霊場がめぐられています。
また、寺院や公園の名前になっていることもあります。
掛け軸に描かれる「来迎図」としての意味
十三仏は、雲の上に乗って亡くなった方を迎えに来る「来迎図」として掛け軸に描かれることもあり、仏壇周りに祀られることもあります。
この来迎図としての意味合いを知っておくと、掛け軸のどの図柄が自分の家の仏事にふさわしいかを判断しやすくなります。

宗派による違いを知っておく
十三仏の掛け軸は、すべての宗派で同じように用いられるわけではありません。
この章では、どの宗派で祀られ、どの宗派では祀られないのかという実務的な線引きまで踏み込んで説明します。
十三仏を祀る宗派・祀らない宗派
多くの宗派で飾られますが、日蓮宗や浄土真宗では飾らず、真言宗では専用のものになります。
日蓮宗と浄土真宗では、十三仏のお飾りは基本的にしないとされています。

浄土真宗は阿弥陀如来の本願によって誰もが往生できるという考え方を根本としているため、追善供養として十三仏を段階的に頼る発想そのものになじまない、という点が背景にあるのが理由のようです。
真言宗における「真言十三仏」との違い
真言宗では、一般的な十三仏とは異なり、大日如来を中心とした「真言十三仏」という専用の顔ぶれ・図柄が用いられます。

真言宗の十三仏(真言十三仏)は、初七日から三十三回忌までの主要な十三回の追善供養をつかさどる十三の仏様に、真言宗の開祖である弘法大師(空海)を加えた計十四尊が描かれるのが特徴です。中央に本尊である大日如来が位置し、その下部に弘法大師が描かれます。
十三仏の意味、宗派による違い、どの法要でどの仏様を飾るのかについて解説されている通り、宗派ごとの違いを理解した上で掛け軸を選ぶことが重要です。
判断に迷う場合は、掛け軸を用意する前に菩提寺や親族の年長者に一度相談することをおすすめします。

十三仏の掛け軸はいつ・どこに飾るのか
掛け軸を用意しても、いつ・どこに飾ればよいのか分からないという声もよく聞かれます。
この章では、飾るタイミングと場所の両方を具体的に解説します。
飾るタイミング(法要・お盆・お彼岸)
十三仏の掛け軸は、四十九日までの法要はもちろん、一周忌以降の年忌法要、お盆、お彼岸など、仏事全般で飾られます。

常時掛けたままにするのではなく、こうした仏事のタイミングに合わせて掛け外しをする家庭が多いのが実情です。
掛け替えの時は、「矢筈(やはず)」を使用して優しく丁寧に。

飾る場所と向き
飾る場所としては、床の間や仏壇の横、仏壇の上部などが一般的です。

葬儀後すぐであれば祭壇の近く、四十九日以降はお仏壇の近く、お盆ではお盆飾りの近くに飾るとよいとされています。
部屋の広さや仏壇の大きさに応じて、掛け軸のサイズも変わってくるため、次の章で選び方を具体的に見ていきます。
十三仏の掛け軸の選び方
十三仏の掛け軸を選ぶ際は、サイズ・表装・価格帯という3つの観点から検討すると失敗が少なくなります。
サイズ・表装(軸装)の選び方
掛け軸のサイズは、一般的に「尺」という単位で表され、床の間の大きさや仏壇の高さに合わせて選ぶ必要があります。

参考に、掛け軸のサイズと最適な場所を一覧にしました。
| 名称 | サイズ | 適応場所 |
|---|---|---|
| 尺三幅 | 幅 約44.5cmx 164cm | マンションや小さな床の間 |
| 尺五幅 | 幅 約54.5cm×190cm | 一間床に最も綺麗に収まる |
| 尺八幅 | 表装前の本紙(絵や書を書く用紙)のサイズが一尺八寸(約54cm)のもの出来上がりの長さは190cm〜200cm 程度 | 標準的なサイズ(尺五幅:約170〜190cm)よりもやや大きめで、比較的大きめの床の間 |
| あんどん | 幅 約54.5cm x 約140cm | 現代の住宅、天井が低い部屋やモダンな和室 |
| 尺幅(しゃくはば・しゃくふく) | 幅が一尺(約30cm) | 小さな床の間や、現代の住宅における狭い壁面、柱の間 |
| 尺幅横物(しゃくはばよこもの) | 尺幅(約30cm幅)がベースの横長の形式 | お茶席の「茶掛」や、ちょっとした空間のアクセント |
タペストリータイプやスタンドタイプなど、床の間がない住宅事情に合わせた形式も近年は増えています。

タペストリーやスタンドタイプなど、部屋に合わせて十三仏をお祀りできるよう様々な種類が用意されている点は、選ぶ際の安心材料になります。
価格帯の目安と選ぶポイント
十三仏の掛け軸は、表装の生地(緞子・正絹など)や仕立ての違いによって価格帯が大きく異なります。
高価なものほど良いというわけではなく、飾る場所の格式や家の慣習に合わせて選ぶことが基本です。
価格を左右するポイントは、本紙(絵の部分)の製法が、印刷か肉筆(手書き)か、表装(周りの布)の質が安価な綿や合成繊維か、高級な緞子(どんす)や西陣織、金襴かです。


| 価格を決める要素 | 価格安い | 価格高くなる |
|---|---|---|
| 本誌の部分(絵の部分) | 印刷 | 肉筆 |
| 表装(周りの布) | 綿や合成繊維 | 緞子(どんす)や西陣織、金蘭 |
| 収納箱 | 紙箱 | 桐箱(防虫効果あり) |
収納箱が紙箱か、防虫効果のある高級な「桐箱」かで大きく変わります。
ですから目安の価格も数千円〜10万円前後と幅が大きいです。

上の写真は「桐箱」と「タトウ(紙箱)」です。両方ある方がより良い状態で保管できます。
しまう時は、桐箱の枕(くぼみや段差がある側)の広い方に、軸の表木(上部)が向くように入れます。

筆者が掛け軸を選ぶ際に意識しているポイント
ご自身の菩提寺の宗派(または飾る目的)に合った仏様の種類と、お仏壇や床の間に合うサイズ・形状を確認することが最も重要で筆者も必ず確認します。

・飾る場所(床の間/仏壇横/壁掛け)の寸法
・表装の素材と価格帯のバランス
・普段の収納方法(桐箱の有無)
知人に相談されて、一緒に13仏の掛け軸を専門店に見に行った時です。すごく気に入った仏絵師の作品を購入しようと表装の相談に入った時に、ふと疑念が…。
「あなたのお宅、真言宗じゃなかったかしら?」と尋ねると「そうよ」という返事。「真言宗用の13仏(14尊)にしないと!」危うく、買い直しも掛け直しも免れました。

皆さんも、ご自身の宗派には十分ご注意ください。
十三仏の掛け軸の実例と筆者の視点
ここまで解説してきた内容を踏まえ、実際の十三仏の掛け軸がどのような図柄で構成されているのかを見ていきます。
実際の作品例から見る図柄の特徴

それぞれの法要に、それぞれの仏様がお見守りくださる良い掛け軸です。
不動明王(初七日)釈迦如来(二七日)文殊菩薩(三七日)普賢菩薩(四七日)地蔵菩薩(五七日)弥勒菩薩(六七日)薬師如来(七七日)観音菩薩(百か日)勢至菩薩(一周忌)阿弥陀如来(三回忌)阿閦如来(七回忌)大日如来(十三回忌)虚空蔵菩薩(三十三回忌)と、全て揃っておられます。
表装も緞子(どんす)や金蘭が使用されていていて申し分ないです。
十三仏の掛け軸に関するよくある質問(FAQ)
Q1.十三仏の掛け軸は誰でも飾ってよいのですか?
A.1 浄土真宗と日蓮宗を除く多くの宗派で飾ることができます。
ただし判断に迷う場合は菩提寺に確認することをおすすめします。
Q2.十三仏の掛け軸はいつまで飾っておくものですか?
A2. 常時飾っておくものではなく、法要やお盆、お彼岸などの仏事のタイミングに合わせて掛け、終わったら片付けるのが一般的です。

専用の道具を使うと掛け軸を痛めず扱うことができます。一例は、矢筈(やはず)でこれで掛け軸を金具に引っ掛けます。こちらは「片口(かたくち)」と言って初心者でも使いやすいタイプになります。

掛け軸の飾り方、しまい方の詳しい記事はこちら☝️
Q3.真言宗の十三仏と一般的な十三仏は何が違うのですか?
A3. 真言宗では大日如来を中心とした「真言十三仏」という専用の図柄が用いられ、通常の十三仏とは構成が異なります。
真言宗の十三仏(真言十三仏)は、初七日から三十三回忌までの主要な十三回の追善供養をつかさどる十三の仏様に、真言宗の開祖である弘法大師(空海)を加えた計十四尊が描かれるのが特徴です。中央に本尊である大日如来が位置し、その下部に弘法大師が描かれます。

Q4.十三仏の掛け軸はどこで購入できますか?
A4. 仏壇・仏具の専門店や、掛け軸を専門に扱う通販サイトなどで購入することができます。ほんの一例ですがご参考まで。
Q5. 十三仏の掛け軸は リビングに飾ってもいいのでしょうか?

A5. 現代の住まいでは、和室や床の間がない家も多いため、インテリアになじむモダンなデザインのタペストリーをリビングに飾る方が増えています。
まとめ|十三仏の掛け軸を正しく理解して選ぶために
十三仏の掛け軸は、亡くなった方を極楽浄土へと導く13人の仏様を描いた、日本独自の信仰に基づく掛け軸です。

宗派によって飾る・飾らないがはっきり分かれるため、まずはご自身の家の宗派を確認することが第一歩になります。
その上でサイズや表装、価格帯を比較しながら、飾る場所や仏事の場面にふさわしい一幅を選んでいただければと思います。
この記事を読んで、不安は解消されましたか?それでも迷ったときは一人で判断せずに、専門店に相談してください。購入はそれからでも遅くありません。納得してから購入していただくと間違いないです。
参考に専門店をご紹介します。他にもたくさんありますのでご自身でも検索なさってください。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。感謝です。
また、掛け軸はご自身でも作ることができます。
自作掛け軸について詳しくはこちらを☝️
無地掛け軸からオリジナル掛け軸を作成するなら、こちらの記事を☝️














