こんにちは、絵師の徳田智子です。
早いもので絵の道に入って半世紀。
アクリル絵の具を愛用して5年の歳月が流れました。
紙粘土工作の仕上がりを大きく左右するのが、色付けに使う絵の具選びです。
数ある絵の具の中でも、アクリル絵の具は発色の良さと扱いやすさから紙粘土との相性が抜群です。
この記事では、紙粘土にアクリル絵の具で色を付ける具体的な方法から、ムラなくきれいに仕上げるコツ、仕上げのニス選びまでを順番に解説します。
読み終える頃には、初めての方でも失敗しにくい色付けの手順と、作品をワンランク上に見せる工夫が具体的にわかります。

左上から:練り込みのりんご、ハート。色付けで制作した、ハート、鹿。その下の青いハートは、右が練り込み、左は色付けで制作。真ん中のりんごは色付けです。
紙粘土の色付けにアクリル絵の具が選ばれる理由
紙粘土の色付けにはさまざまな絵の具が使えますが、その中でもアクリル絵の具を選ぶ理由は明確です。
この章では発色・乾燥速度・耐水性という3つの観点から、アクリル絵の具が紙粘土向きである根拠を具体的に見ていきます。
発色の良さと乾燥の速さ
アクリル絵の具は顔料の密度が高く、少量でもしっかりと色が乗ります。
紙粘土のような吸水性のある素材でも、色が沈んで薄く見えることが少ないのが特徴です。
紙粘土で製作したハートシリーズ:燃えるハートとクールなハート(桐箱入)、共にアクリル絵の具で着色しています。

さらに乾燥が速いため、重ね塗りをする際に長時間待つ必要がなく、作業のテンポを崩しません。
水彩絵の具のように乾くまで数時間かかることがないので、1日で複数の工程を進めやすい点も魅力です。
乾くと耐水性になる仕組み
アクリル絵の具は、水に溶けるアクリル樹脂を媒体として顔料を分散させた絵の具です。
塗った直後は水で伸ばしたり修正したりできますが、乾燥すると樹脂が固まり、耐水性の塗膜になります。
このため、完成後の作品が多少の水濡れや湿気に触れても、色が流れ出しにくくなります。
段ボールの箱も中の紙粘土のハートも、水にとても弱そうに見えます。しかし、アクリル絵の具でどちらもペイントし、上から艶なしニスでコーティングしているので安心です。

紙粘土工作を長く飾ったり、子どもが手に取って遊んだりする用途でも安心して使える理由がここにあります。
水彩・ポスターカラーとの違い
水彩絵の具は乾いた後も水に溶ける性質が残るため、後から水滴が付くと色がにじんでしまうことがあります。
水滴が落ちたのでティッシュで拭き取ると、表面の絵の具が取れてしまいます。

ホルベイン・透明水彩絵の具のクリムソンレーキを使用。乾燥後に水滴を落とすと滲んでティッシュで拭き取れます。
ポスターカラーも同様に耐水性が低く、屋外や湿度の高い場所での展示には不向きです。

画面を均一に塗る掲示物の制作に向いていますが、屋外の掲示は不向きです。室内専用です。
一方でアクリル絵の具は乾燥後にしっかりと固着するため、色移りやにじみのリスクを抑えられます。

左側は、ターナー・ポスターカラー(セルリアンブルーを使用)水滴で滲みます。右側は、ターナー・アクリル絵の具(U-35シリーズのハンザイエローライトを使用)水にもびくともしません。
ポスターカラーとアクリル絵の具の違いについて詳しくはこちらの記事も☝️
紙粘土作品を長期間きれいな状態で保ちたい場合は、アクリル絵の具を選ぶ合理性がここにあります。
色付けを始める前に揃えておきたい道具
道具選びを間違えると、せっかくの色付け作業が思うように進みません。
この章では、最低限そろえておきたい道具と、あると作業効率が上がる便利グッズを具体的にリストアップします。
最低限必要な道具リスト
色付け作業に最低限必要な道具は次の通りです。
- アクリル絵の具(複数色)
- 筆(太筆・細筆を1本ずつ)
- パレット
- 筆洗い用の水を入れる容器
- 紙粘土作品を乾燥させる台や新聞紙
下に白いシート、左から:新聞紙、紙粘土(2種・軽いタイプ)奥がスポンジ、筆(太・中・細)、卵パックのリサイクルパレット、アクリル絵の具(赤・青・黄)、筆洗

パレットは、使い捨てできるペーパーパレットが向いています。

アクリル絵の具は乾くと固まって取れにくくなるため、洗う手間を省けるペーパーパレットのほうが作業のテンポを止めずに済みます。
しかし、環境問題に関心のある方々には「使い捨てはなぁ…。」と思われる方もいらっしゃるでしょう。筆者は「卵パック」を集めておいてそれを「リサイクルパレット」として使用しています。アクリル絵の具が固まっても気にすることなく、作業に集中でき、使用後は各自治体の分別方法に従って出していただくだけです。

リサイクルパレットについて詳しくはこちら記事のパレット編をお読みください☝️

100均で揃えられる便利グッズ
道具のほとんどは100円ショップで揃えることができます。
- 紙粘土(軽量タイプ・重量タイプ)
- アクリル絵の具セット(お店によって単色販売のところもあります)
- 各サイズの筆
- つまようじ(細かい模様付けに使用)
- ニス(仕上げ用)

筆者の近隣の100均ショップには、セットのアクリル絵の具は取り扱いがなく、単色販売はありましたが、色の3原色(赤・青・黄)に白・黒の5色しか販売がありませんでした。
色の3原色(赤・青・黄)さえあれば、大抵の色は作れます。例えば、緑なら「青+黄」で。オレンジなら「赤+黄」で作れます。紫なら「赤+青」です。
混色について詳しくはこちらの記事を☝️
初期費用を抑えたい方や、まず試しに作ってみたい方には100均アイテムだけで十分に始められます。
100均アイテム番外編:リストにはありませんが、あるととても便利でした!

ペーパータオル、ウェットティッシュ、霧吹き。
Q.さて何に使うのでしょう?答えは次の章に!
紙粘土の色付け方法は2パターン
紙粘土への色付けは、大きく分けて「練り込む方法」と「塗る方法」の2種類があります。
同じようなりんごの作品:左側は「練り込む方法」、右側が紙粘土が乾いてから「塗る方法」。同じ絵の具を使用していますが「印象」が違いますね。

この章ではそれぞれの手順と、どのような作品に向いているかを具体的に解説します。
粘土に絵の具を練り込む方法
紙粘土に絵の具を練り込む手順は次の通りです。
- 紙粘土を適量ちぎって手に取る
- 絵の具を少量パレットに出す
- 粘土に絵の具を乗せ、色が均一になるまで揉み込む
- 色ムラがなくなったら成形に進む
この方法は、粘土全体に色が均一に入るため、削ったり切ったりしても断面が同じ色になるのが利点です。
果物や動物など、立体的な作品を作る際に向いています。
青いハートの作品を製作中。絵の具は100均の青色です。

先ほどのQ.の答えです!A.この後の手を綺麗にするのにとても役立ちました!

練り込みの出来上がり作品です。しっとり、落ち着いた色合いが特徴です。
乾燥させた粘土に塗る方法
成形して乾燥させた紙粘土の表面に、後から絵の具を塗る方法もあります。
- 紙粘土を成形し、完全に乾燥させる
- 表面のほこりや凹凸を軽く整える
- 筆に絵の具を取り、薄く塗り広げる
- 乾燥させてから必要に応じて重ね塗りする
この方法は、絵柄や細かい模様、グラデーションなど繊細な表現をしたい作品に向いています。
キャラクターの顔や風景など、色の塗り分けが多い作品では、練り込みよりも塗る方法のほうが表現の自由度が高くなります。

上の作品は、鹿の親子です。鹿の毛並みや模様、目の表現など細かい表現ができます。
きれいに仕上げるための配色とムラ防止のコツ
同じアクリル絵の具を使っても、塗り方次第で仕上がりの印象は大きく変わります。
この章では、下地処理・水加減・重ね塗りという3つの技術的なポイントを具体的に解説します。
下地処理で発色を良くする
紙粘土は表面に細かな凹凸があり、そのまま絵の具を塗ると色が沈んで見えることがあります。
白い下地材(ジェッソなど)を薄く塗ってから色付けをすると、上に乗せる色の発色が良くなります。
写真右:白色ジェッソ。

下地を挟むことで、紙粘土の地の色を拾わずに、絵の具本来の色をそのまま表現できるようになります。

よく乾燥してから、100均の青色を塗りました。

下地を挟むことで青色が綺麗に満遍なく塗ることができます
水の量を調整してムラ・ひび割れを防ぐ
アクリル絵の具に水を混ぜすぎると、乾燥時に絵の具の樹脂分が薄まり、塗膜が弱くなってひび割れの原因になります。
反対に水が少なすぎると筆の伸びが悪くなり、塗りムラが出やすくなります。

絵の具に対して水は同量程度を目安にし、筆にスッと絵の具が乗る程度の濃度に調整するのが基本です。
一度にたくさんの水を加えず、様子を見ながら少しずつ足していくと失敗が少なくなります。スポイドでポトリポトリ、っと加えると簡単です。

重ね塗りとグラデーションで立体感を出す
1回塗りでムラが気になる場合は、完全に乾燥させてから2回目を薄く重ねます。
重ね塗りをする際は、1回目より少し薄めに溶いた絵の具を使うと、下の色を活かしながら自然な深みを出せます。

複数の色を境目でぼかすように重ねれば、グラデーションによる立体感も表現できます。

重ね塗りの時は、下地がきっちり出来上がっているので、本当に筆さばきが楽になります。アクリル絵の具ではグラデーションは少しむずかいしいのですが、2度目以上の重ね塗りの場合は、スムーズに表現できます。
この場合は、失敗したなと感じれば、濡れティッシュなどでサッっと拭き取れば、描き直しができます。
仕上げのニス塗りは必要か
色付けが終わった紙粘土作品は、そのままでも完成といえますが、ニスを塗ることでさらに質感と耐久性が高まります。
この章では、ニスを塗るメリットと、つや出し・つや消しの選び方を具体的に解説します。

上のりんご3色は、色塗りで仕上げて、下のりんご3色は、練り込みで仕上げました。どちらも、「ツヤありニス」で仕上げました。
ニスを塗るメリット
ニスを塗ることで得られるメリットは主に次の3つです。
- 表面をコーティングして色移りや色あせを防ぐ
- ほこりや汚れが付きにくくなる
- 作品の質感や立体感が引き立つ
特に長期間飾る作品や、人の手に触れる機会が多い作品には、ニスを塗ることで見た目と耐久性の両方が向上します。
つや出し・つや消しの選び方
ニスにはつや出しタイプとつや消しタイプがあり、仕上がりの印象が大きく変わります。

- つや出しニス:ガラスやキャンディのようなツヤ感を出したい作品に向く
- つや消しニス:陶器や木製品のような落ち着いた質感を出したい作品に向く
作りたい作品の雰囲気に合わせてニスの種類を選ぶことで、色付けだけでは出せない仕上がりの差を作れます。


紙粘土の乾燥時間と色付け前後の注意点
紙粘土は乾燥の状態によって色の入り方や仕上がりが変わるため、タイミングの見極めが重要です。
この章では、乾燥時間の目安と、色付け後に起こりやすいトラブルの防ぎ方を具体的に見ていきます。

練り込んで作った作品も同様に「完全に乾燥」してから、次の工程に移りましょう!
乾燥時間の目安
紙粘土の乾燥時間は、厚みや大きさ、季節によって差がありますが、薄いパーツで半日〜1日、厚みのある作品では2〜3日程度が目安です。
練り込みで作ったハートです。かなり厚みがあります。青い方で12mm、赤い方は、一番厚みのあるところで18mm。かなり厚みがありますが、3日もするとカラカラに乾燥していました。

表面が乾いていても内部が湿っていることがあるため、厚みのある作品は焦らず十分な時間を置くことが大切です。
色付け後のひび割れ・色移りを防ぐには
完全に乾く前に色を塗ると、内部の水分が抜ける際に表面がひび割れることがあります。
色付けは必ず紙粘土が完全に乾燥してから行うのが基本です。
また、色付け後に別の色のパーツと接触させると色移りすることがあるため、ニスで表面を保護しておくと安心です。
左側:上の写真の練り込みで色付けしたハートには、つや消しニス、右側:色付けしたハートにはつや出しニスを塗りました

しっかり乾燥してからニスを塗ったので、綺麗に仕上がりましたね。
よくある失敗とその対処法Q&A
Q1. 絵の具を塗ったら色が薄く、下の紙粘土の色が透けて見えます。
A1. 下地処理が不足している可能性があります。白い下地材を先に塗ってから色を重ねることで、発色が改善します。

Q2. 乾燥後に絵の具の表面がひび割れてしまいました。
A2. 水を混ぜすぎて絵の具の濃度が薄くなっていたことが原因として考えられます。次回は水の量を減らし、筆にしっかりと絵の具が乗る濃度で塗ってみてください。

Q3. 練り込んだのに、色にムラが出てしまいました。
A3. 絵の具と粘土を揉み込む時間が短いことが主な原因です。色が均一になるまで、根気よく揉み込むことがムラを防ぐポイントです。

おすすめのアクリル絵の具メーカー
100均のアクリル絵の具でもできますが、より綺麗に仕上げたい時や好きな色を求めたい時は、専門メーカーのアクリル絵の具をおすすめします。
代表的な3社をご紹介します。
3社の比較:発色/混ぜやすさ/紙粘土との相性

| 比較項目/メーカー名 | ターナー | リキテックス | ホルベイン |
|---|---|---|---|
| 紙粘土と混合の様子 | ○ ネチネチして手離れが悪いが混ざり具合は良い | ◎ すんなり混ざり手離れも良い | △ 混ざりにくいが手離れは普通 |
| 乾燥後の発色 | ◎ とても良い | ◎ 大変良い | ◎ すごく良い |
ターナー
筆者のお気に入りNO.1アクリル絵の具が、ターナーのU-35シリーズです。発色の良さとリーズナブルな価格に首っ丈です。こちらも日本のメーカーですが、ホルベインの方が歴史はあります。
パーマネントグリーン ライトとプライマリーイエロー、ナフソールレッド ミディアムの3色で練り込み手法でりんごを作成。
個人的感想ですが、ネチネチした手触りで、絵の具との混ざり具合と紙粘土との相性は2番目でした。

でも、綺麗に仕上がっています。100均よりは、発色も出来上がりも全然違いますね。
リキテックス
リキテックスのアクリル絵の具は、世界初の水性アクリル絵具として1955年に発売された、元祖アクリル絵の具のメーカーなのです。こちらは、アメリカのメーカーです。

リキテックスは、蛍光イエローを中心に、アクリルガッシュでパーマネントグリーンライト、ピンクとちょっと蛍光っぽい色をチョイス。

流石の発色!紙粘土との練り込みの相性は、個人的な感想ですが「ダントツ1位」です。絵の具の混ざり具合も手離れの良さも格段に違いました。
ホルベイン
ホルベインも日本のメーカーで、日本におけるアクリル絵の具の老舗です。油絵具のような高めの粘度で固着性にすぐれていて、扱いやすいと言うのがメーカーの謳い文句です。
ホルベインからは、パステル調の「コンポーズローズ、イミダゾロンレモン、アクアブルー」の3色を選びました。

メーカーの言うように高めの粘度なのが理由なのかはわかりませんが、紙粘土と混ぜにくかったのは事実です。他の2社に比べて一番混ぜにくいでした。でも、発色は他の2社にも劣らず美しいです。
まとめ|紙粘土の色付けはアクリル絵の具で誰でもきれいに仕上がる
紙粘土の色付けには、発色の良さ・乾燥の速さ・耐水性を兼ね備えたアクリル絵の具が最も適しています。

練り込む方法と塗る方法という2つの手段を作品に応じて使い分け、下地処理や水加減、重ね塗りのコツを押さえることで、初心者でも仕上がりに差をつけられます。
さらにニスで仕上げれば、色移りや汚れを防ぎながら作品の質感を長く保つことができます。
ご紹介した手順を1つずつ試して、紙粘土工作をより楽しんでいただければ幸いです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。感謝です。
アクリル絵の具の基本の使い方についてはこちらの記事を☝️
アクリル絵の具とガッシュの違いについて詳しくはこちらの記事を☝️
紙粘土以外の雑貨関係に興味のある方は、こちらの記事も☝️















