こんにちは、絵師の徳田智子です。絵の道に入って早半世紀。
水彩画の素晴らしさをお伝えして30年以上になります。
水彩画で風景を描いてみたいけれど、難しそうで一歩を踏み出せない。
そんな方は多いのではないでしょうか。
実は水彩画の風景画は、いくつかの手順とコツさえ押さえれば、初心者でも十分に「簡単に」楽しく描けるジャンルです。
この記事では、道具選びから下絵の描き方、空や海、木といった風景の定番モチーフの塗り方まで、順を追って具体的に解説します。
読み終える頃には、次にどんな風景を、どんな手順で描けばよいかがはっきりとイメージできるはずです。
春日奥山・白雨/はくう(明るい中、白く煙って降る大雨)を描きました

水彩画の風景画が「簡単」に見えて奥深い理由
水彩画の風景画は、油絵やアクリル画に比べて道具が少なく、準備にかかる手間が小さいという特徴があります。
紙と絵の具、筆と水さえあれば始められるため、初心者が最初に挑戦する画材として選ばれやすい分野です。
一方で、水を多く使う技法であるがゆえに、にじみやぼかしといった水彩ならではの表現を理解しておく必要があります。
この章では、なぜ水彩画の風景が「簡単に始めやすく、奥が深い」と言われるのか、その理由を整理しながら、この記事全体で扱う内容の土台を作っていきます。
それには何をおいても「ちゃんとした水彩紙」を使うことです。
特に初心者の間は、300g/㎡以上の厚みの水彩紙を使うことでほとんどの問題は解決します。
風景画を描く前に準備するもの
風景画を描き始める前に、最低限そろえておきたい道具があります。
道具選びを誤ると、思うような表現ができずに「難しい」と感じてしまう原因にもなりかねません。
ここでは、初心者が最初にそろえるべき画材と、それぞれを選ぶ際のポイントを具体的に紹介します。

筆者の愛用は、ホルベインの透明水彩絵の具12色セットです。市販のパレットに絵の具を出して固めてから使っています。愛用の筆は「サクラクレパス・ネオセブロン」と「ターレンス・ヴァンゴッホビジュアル筆」。丸筆と平筆が2本あれば十分です。水彩紙はCANSONの重さ300g/㎡。雑巾と水入れも。
初心者におすすめの画材の選び方
水彩絵の具には、大きく分けて透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)があります。
風景画では、光の透け感や重ね塗りによる奥行き表現がしやすい透明水彩が広く使われています。
絵の具は12色程度のセットでも十分に始められます。
お好みで、緑や茶系の色が多めに入っているセットを選ぶと、風景画で使う色を作りやすくなります。
筆者のお気に入りは、「ホルベイン透明水彩絵の具で12色セット」。セットにない色は、単品で欲しい色を買い揃えています。

筆は、面を塗るための平筆と、細部を描くための丸筆を1本ずつ用意しておくと、最初の一枚から幅広い表現に対応できます。

意外と思われるかもしれませんが。学童用の「サクラクレパス・ネオセブロン」は優秀です。大人でも使い勝手がいいです。筆者はアクリル絵の具を愛用するようになって、このシリーズを使い始めましたが、大人でも十分使えると確信しました。
子ども用と侮ってはいけません。使ってみてください。
丸筆はこちら⬇️
平筆はこちら⬇️ 平筆は、太めがいいですね。
ターレンス・ヴァンゴッホビジュアル筆も使いやすいです。
紙・筆・絵の具の基本セット
水彩紙は、厚みや表面の質感(目の粗さ)によって、にじみ方や乾く速さが変わります。
初心者のうちは、中目(コールドプレス)と呼ばれる紙を選ぶと、にじみとぼかしの両方を扱いやすくなります。
紙は、1平方メートルあたりの紙の重さを示す坪量(g/m²)で表します。数字が大きいほど紙が厚く、水を含んでも波打ちにくくなります。

300g/㎡以上のものを選ぶと、表面がぼこぼこにならず良いです。上のCANSON紙はブロックタイプ。描き終わった後は、カッターで1枚ずつ剥がせます。
紙について詳しくはこちらの記事も☝️
パレットは、色を混ぜるスペースが広く取れる仕切り付きのものが使いやすく、絵の具が乾いても水を含ませればすぐに使えるため、繰り返しの制作に向いています。

写真のようなパレットに、あらかじめお気に入りの透明水彩絵の具を細かい仕切りのところに出して乾燥させます。すると自家製の固形水彩絵の具が出来上がります。

毎回、絵の具を出す必要もなく、使い終わったとは広い部分の使ったところだけを濡れティッシュや雑巾で拭き取るだけで後片付けは終了。とっても便利ですよ。
自家製固形水彩絵の具について詳しくはこちらの記事を☝️
これらの道具は画材店や大型の文具店、オンラインショップでも購入でき、初心者向けのセット商品を選べば、必要なものを一通りそろえやすくなっています。
簡単に描ける風景モチーフの選び方
風景画を描くとき、最初から複雑な街並みや人物の多い風景を選んでしまうと、途中で挫折しやすくなります。
初心者のうちは、空・水面・山・木といった、形がシンプルで面積の大きいモチーフを中心に選ぶことで、無理なく完成までたどり着けます。
この章では、初心者が「簡単に描ける」と感じやすい構図の選び方と、下絵作りのコツを紹介します。
青い空、緑の山に生い茂った木々。下の方に「半夏生(ハンゲショウ)」が、絨毯のように見えます。

初心者向けの構図の決め方
構図を決める際は、画面を上下や左右に大きく三分割し、主役となるモチーフを中心からややずらした位置に配置すると、バランスの取れた構図になりやすくなります。
空と地面(または海)の面積比を変えるだけでも、印象が大きく変わります。
たとえば空を画面の三分の二ほど大きく取ると開放感のある風景に、逆に地面や水面を広く取ると落ち着いた印象の構図になります。
海や平原の場合などの風景の場合、遠くの水平線や地平線がそのままアイレベル(目の高さ)になります。

写真やスケッチから下絵を作るコツ
下絵は、鉛筆で薄く描くのが基本です。
濃く描きすぎると、水彩絵の具を塗ったときに線が透けて見え、仕上がりの印象を損ねてしまいます。
写真を参考にする場合は、細部をすべて描き写す必要はなく、主役となる建物や木、道などの大きな形だけを鉛筆で軽く配置し、細かい部分は塗りの段階で表現していくとスムーズです。
HかHBの鉛筆で薄く下描きをします。この時、鉛筆の線にも強弱を持たせて、より生き生きとした下描きにすると、出来上がりがより一層良くなります。

水彩画の基本の塗り方
水彩画の風景を「簡単に」仕上げるためには、塗り方の順番を守ることが重要です。
広い面積から塗り始め、徐々に細部へと進めていくのが基本の流れになります。
この章では、平塗り、にじみとぼかし、重ね塗りという3つの基本技法を順番に解説します。
平塗り(ウォッシュ)の基本
平塗りとは、筆にたっぷりと水と絵の具を含ませ、紙の広い面を均一な色でむらなく塗る技法です。
この時は、パレットの大きな区切り部分に直接チューブから少し多めに絵の具を出します。今回は、ホルベイン透明水彩絵の具12色セットにある「コバルトブルー ヒュー」を使います。

空や水面など、面積の大きい部分を最初に塗る際に使われます。
筆を一定方向に動かし、色が乾かないうちに次の一筆を重ねていくことで、むらのない仕上がりになります。

にじみとぼかしの使い方
にじみとは、紙が湿っている状態で別の色を置くことで、色同士が自然に混ざり合う技法です。
ぼかしは、塗った色の輪郭を水を含ませた筆でなでることで、境界線をやわらかく溶かす技法を指します。
にじみ

これらの技法は、雲の輪郭や遠くの山並みなど、はっきりとした線を描きたくない部分に使うことで、写真にはない水彩画らしい柔らかな雰囲気を作り出せます。
ぼかし

なので、まずは、本番に取り掛かる前に別の水彩紙でたくさん練習しましょう。
重ね塗りで奥行きを出す方法
重ね塗りは、先に塗った色が完全に乾いてから、その上に別の色を重ねる技法です。
乾く前に重ねてしまうと、意図しないにじみが発生してしまうため、注意が必要です。

遠くのもの(奥)から塗り始めて、手前のものは最後に描き込むといいですね。その時、奥のものほど色を薄く塗り、手前のものほど色を濃く塗ることで、遠近感のある風景画に仕上がります。
空・海・木の簡単な描き方
風景画でよく登場する空、水面、木は、それぞれに簡単に描けるコツがあります。
一つずつの技法自体はシンプルですが、組み合わせることで説得力のある風景画に仕上がります。
この章では、代表的な3つのモチーフについて、初心者でも再現しやすい手順を紹介します。
空をきれいに見せるコツ
空を描く際は、上部を濃く、地平線に近づくほど薄くグラデーションをかけるように塗ると、自然な奥行きが生まれます。

雲を表現する場合は、紙が湿っているうちに白い部分を筆で拭き取るように残すか、あらかじめマスキング液で雲の形を保護しておく方法があります。

薄い青系の色を基調にしつつ、夕方の風景であればオレンジや紫を少量混ぜることで、時間帯の異なる空の表情を作り分けられます。

水面や海の表現方法
水面は、空の色を反映させることで、風景全体にまとまりを持たせられます。
具体的には、空に使った色を薄めて水面にも塗り、そのうえで横方向の筆使いを加えることで、水面特有の揺らぎを表現できます。

波や反射を描き込みすぎると、かえって水面らしさが失われてしまうため、白い紙の部分を適度に残しておくことも意識したいポイントです。
海の描き方について詳しくはこちらを☝️
木や緑の塗り方
木を描く際は、幹と葉を別々の工程で塗ることで、立体感を出しやすくなります。
葉の部分は、一色で塗りつぶすのではなく、明るい緑と暗い緑を部分的に重ねることで、木々の茂り方に自然な陰影が生まれます。

最初はホルベインの「パーマネントグリーン No.1」 で描きました。
重ねて「ビリジャン ヒュー」や「イエローオーカー」補色関係にある「バーミリオン ヒュー」なども混色して、葉っぱに深みと奥行きを出します。

筆先をトントンと軽くたたくように使うスタンプ状のタッチも、葉の質感を表現する際によく使われる方法です。



木の描き方について詳しくはこちらの記事を☝️
失敗しやすいポイントと対処法
水彩画の風景を描く際、初心者がつまずきやすいポイントはある程度共通しています。
あらかじめ失敗しやすい箇所を知っておくことで、無駄な描き直しを減らし、完成までの時間を短縮できます。
また、絵の具を水で薄めすぎると発色が弱くなり、全体がぼんやりとした印象になってしまいます。
濃淡のメリハリをつけたい部分は、絵の具の量を増やし、水を控えめにすることを意識すると改善しやすくなります。

水彩絵の具は、乾くと色が沈んでしまいやすいので、完全に乾いてからもう一度「水分少なめ」で重ね塗りすると濃淡のメリハリがつけやすいです。
必ず、「完全に乾いてから」作業を進めてください。
筆者が実践している風景画の描き方(実例紹介)
ここまで紹介してきた手順やコツを踏まえ、筆者が実際にどのような流れで一枚の風景画を仕上げているかを紹介します。
今回は、水辺の風景ではないので、水の描き方について詳しくは、こちらの海のある風景の描き方を参考に☝️
このときしっかりと構図を決めて、大まかな配色まで決めておきます。
その後、本番の水彩紙に下描きしていきます。
鉛筆の線も少し強弱をつけて単調になりすぎないように気をつけます。
明るい色(例えば、黄色)から塗り始め、だんだん濃い、暗い色へと進めていきます。
お気に入りのクロッキー帳は「CANSON キャンソンXLクロッキー 」A4サイズ。

このまま着色することもあります。イメージしやすいですね。

次は実際に水彩紙に、HBの鉛筆で下描きしました。

雲の白さを残すために「マスキングインク」であらかじめ雲の部分に塗っておきましょう。

この時、ペンタイプを使えば、初心者でも簡単にできます。

雲の部分をスキングインクでカバーしました。

手前の半夏生(ハンゲショウ)を描き加えて出来上がりです!

まとめ|水彩画の風景は手順を知れば簡単に描ける
水彩画の風景画は、道具選びから下絵、塗りの順番までの基本的な手順を押さえることで、初心者でも十分に楽しく描き進められるジャンルです。
平塗り、にじみとぼかし、重ね塗りという3つの技法を使い分けながら、空・水面・木といった定番モチーフを一つずつ練習していくことで、着実に上達していけます。
- 道具は紙・筆・絵の具・水があれば始められる
- 構図はシンプルで面積の大きいモチーフを選ぶ
- 平塗り・にじみとぼかし・重ね塗りの3技法を使い分ける
- 重ね塗りは完全に乾いてから行う
まずは難しく考えすぎず、シンプルな構図の一枚から描き始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 水彩画の風景を描くのに、どのくらいの道具をそろえればよいですか?
A1. 絵の具12色程度のセット、平筆と丸筆各1本、中目の水彩紙、パレット、筆洗い用の容器があれば、最初の一枚を描き始めるには十分です。

Q2. 初心者はどんな風景から描き始めるのがおすすめですか?
A2. 空と水面、あるいは空と山並みのように、形がシンプルで面積の大きいモチーフを中心にした構図から始めると、無理なく完成までたどり着きやすくなります。

Q3. にじみやぼかしがうまくいきません。コツはありますか?
A3. 紙の湿り具合によって仕上がりが大きく変わるため、まずは同じ紙の端で試し塗りをしてから本番に取りかかると、失敗を減らせます。

他の道具(絵の具やパレット、筆など)は100均で揃えたとしても、紙だけは専門の画材店で「300g/㎡」以上の重さの紙を使ってください。
仕上がりが全然違います。
何より、描いている途中から描き心地が全然違います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。感謝です。
水彩絵の具の基本のテクニックならこちら記事を参考に☝️
水彩絵の具の選び方ならこちらの記事を参考に☝️
色々と実験して、どんどん水彩画を楽しんでください。

















筆者はこれを「下から上運動」と呼んでいます。
木は地下の「根」から吸い上げた「水や養分」を、上の葉っぱの隅々まで届けているので、そのエネルギーの流れのように描くと木が生き生きと描けるような気がするのです。