水彩画の人物の描き方!初心者でも透明感がでるコツと手順

こんにちは、絵師の徳田智子です。
絵の道に入って早半世紀。

水彩画の素晴らしさをお伝えして30年以上になります。

「水彩で人物画を描いてみたいけれど、肌色が濁ってしまう」「顔のパーツや陰影のつけ方が分からず、平坦な絵になってしまう」と悩んでいませんか。

水彩画の人物表現は難しく感じられますが、適切な手順と水分のコントロールさえ掴めば、初心者でも驚くほど透明感のある素敵な作品に仕上げることができます。

この記事では、下描きのアタリの取り方から透明感の出る肌色の作り方、立体感を生む重ね塗りまで、人物画の基本手順を分かりやすく解説します。
最後まで読めば、濁りのないクリアな色使いと自然なグラデーションのコツがマスターできます。

肖像画です。あっさり描いていますが、顔の立体感、首の下の部分がよく描けていると思います。

この記事でわかること
  • 水彩画で人物を描く魅力と必要な画材の選び方
  • 失敗しない下書き(アタリ)と透明感を出す混色のコツ
  • 立体感を生み出す陰影表現と重ね塗りのステップ
  • 肌色の濁りを防ぐ水分コントロールとトラブル解決法

水彩画で人物を描く魅力と事前に準備するもの

水彩画による人物表現の最大の魅力は、水と絵の具が織りなす「透明感」と「柔らかい光の表現」にあります。
魅力を最大限に引き出すために、まずは適切な画材と下準備を整えましょう。

人物画に適した透明水彩絵の具と筆・用紙の選び方

人物画では、発色が鮮やかで重なりが美しい「透明水彩絵の具」を使用するのが基本です。
特に肌色を作る際は、発色の良さと混色のしやすさが仕上がりを大きく左右します。

用紙は水を含んでも波打ちにくい「水彩紙(中性紙)」、300g/㎡ を選び、筆は水の含みが良い丸筆(中細・細筆)2~3本を揃えておきましょう。
適した画材を使うだけで、水分のコントロールが劇的に楽になります。

筆者は使い勝手の良さからこのキャンソン紙を愛用しています。

水彩紙について詳しくはこちら記事を参考に☝️

水彩画初心者におすすめの紙(水彩紙)3選!仕上がりはこれで決まる
水彩紙には「細目」「中目」「荒目」などの種類があります。人物の繊細な肌や表情を描く場合は、表面の凹凸が少ない「細目〜中目」が適しています。

筆者が愛用しているおすすめは、「ホルベインの透明水彩絵の具」です。そして、愛用の筆は、なんと!サクラクレパス・ネオセブロンなんです!

学童用と思われるかもしれませんが、しなやかさと強靭さを合わせ持つ優れものです。

「水彩絵の具の種類」や「おすすめ」ついて詳しくはこちらを☝️

【初心者向け】水彩画の絵の具セットのおすすめ!固形とチューブの選び方
水彩画初心者にピッタリ!水彩絵の具とメーカーのおすすめを紹介!

写真や資料を参考に描く際の準備と構図のポイント

初心者が人物を描く際は、実物や鮮明な写真資料をじっくり観察しながら描くのが上達の近道です。
明るい光と影のコントラストがはっきりした写真を選ぶと、立体感が捉えやすくなります。

用紙の中に人物をどう配置するか(構図)も重要です。
頭の上や左右に少し余白を残して配置すると、画面全体にゆとりとバランスの良さが生まれます。

ドラ美
最初は陰影がくっきり分かれている写真を資料に選ぶと、影を入れるポイントに迷わず立体感が表現しやすくなります。

【ステップ別】水彩画による人物の基本の描き方手順

水彩人物画を成功させるには、正しい順序で塗り進めることが大切です。
下描きの段階から仕上げまでの基本ステップを順番に確認していきましょう。

ステップ1:形を捉える下描き(鉛筆デッサン)とアタリの取り方

まずは薄い鉛筆(H~HB程度)を使って、顔の傾きやパーツの位置を示す「アタリ(十字線)」を取ります。

目安として、目は顔の縦の真ん中あたり、目と目の間はもう一つ目が入るくらい、鼻の下と顎の先の中間に口を置くと大きく崩れません。

いきなり目や鼻の細部を描き込まず、頭部の卵型や首・肩の位置関係から大まかに形を捉えるのがコツです。(左側スケッチを参考に)

全体のバランスが整ったら、細部の線を描き込んで下描きを完成させます。
水彩絵の具は薄塗りのため鉛筆の線が透けやすいため、描き終わったら柔らかい消しゴムで線を薄く整えておきましょう。(けれども、筆者は鉛筆の線が残っている方が好みなので、ワザと残しておくといもあります。)

筆者はサクラクレパス「Arch(アーチ)」を愛用しています。本体が柔らかいので水彩紙の表面を傷つけることなく消すことができます。

濃い鉛筆で強く描き込んでしまうと、絵の具を塗った後に鉛筆の粉が溶け出して肌色が黒く濁る原因になります。下書きは必ず薄い線にとどめましょう。

顔(頭)の部分の下描きは、球体と十字線で立体を意識するといいですね。「鉛筆の重みだけで描くイメージで紙に跡を残さない」ぐらいの気持ちで描くといいですね。

ステップ2:透明感を出す肌色(混色)の作り方とベース塗装

肌色は市販の肌色ペーストをそのまま塗るのではなく、水彩ならではの混色で作ることで透明感が生まれます。
基本は「イエローオーカー」「バーミリオン ヒュー」「たっぷりの水」を混ぜてベースを作ります。

できあがった薄い肌色を、光が当たっている明るい部分を中心に全体へ優しく塗り拡げます。
絵の具が乾く前に水を少し足すことで、柔らかい境界線のグラデーションが作れます。

イエローオーカーの絵の具の量は、バーミリオン ヒューよりもグッと少なく、だいたい3対1ぐらいの割合で。イエローオーカーが多すぎると土色に近くなって顔色の悪い人になります。

透明感のあるベースづくりのコツ
  • 「イエローオーカー+バーミリオン ヒュー+たっぷりの水」が基本の肌色レシピ
  • 光が当たる明るい部分から先に塗り拡げる
  • 乾燥前に水を足して、境界線を自然にボカす

ステップ3:立体感を生み出す陰影と重ね塗りのテクニック

ベースの肌色がしっかり乾いたら、影になる部分に少し濃い色を重ねて立体感を表現します。
影の色は黒やグレーを使うと全体が濁ってしまうため、ウルトラマリン ライトやパープルを少し混ぜた肌色を使うのがポイントです。

顎の下、鼻の脇、目の落ち窪みなどの影に色を置き、乾いた筆や水を含ませた筆で境界線をぼかします。
この「重ね塗り」を繰り返すことで、深みのある自然な陰影が生まれます。

ドラ美
影に黒や灰色を使わず、青や紫をほんの少し混ぜるだけで、人物の血色感を損なわずに美しい陰影が作れますよ。

意外と役に立つのが「りんごの描き方」なんです。人物の顔の捉え方が、「りんごの立体感」の捉え方と似ているんですね。一度、りんごの描き方も参考にご覧になってください。詳しくはこちら☝️

【水彩画】色々なりんごの描き方|画家が教える初心者向け完全ガイド

ステップ4:顔のパーツ(目・鼻・口)と髪の毛の描き込み

顔のパーツは細筆を使い、慎重に描き込んでいきましょう。
目は白目と黒目の境目を強く描きすぎず、黒目の中に紙の白地を残してハイライトを作ると生き生きとした瞳になります。

髪の毛は一本一本を描くのではなく、まずは大きな「毛束の大きな塊」として捉えてベース色を塗ります。
毛束の陰影がついたあとに、細筆で流れに沿って数本の毛並みを描き足すと立体感が出ます。

着物を着ているのでざっくり着物も描いて着色しました。顔の立体感はしっかりと捉えられました。首の部分の影もいい感じです。

瞳のハイライト(光の反射)は紙の白地をそのまま残すのがベストです。もしも、残すのを忘れたり、誤って絵の具を塗ってしまったときは、塗乾燥後に不透明水彩の白(ガッシュ)を一滴落とすときらめきが戻ります。

上でも表記しましたが、目を描くときは特に気をつけて、黒目のところにハイライトを残してください。透明水彩絵の具で描くとき「水彩紙の白」が最高に「白い」ので、ついうっかり絵の具で描いてしまうことがないように、マスキングインクで保護しておくといいですよ。

マスキングインク・ペンタイプなら鉛筆で描くように簡単に「白く残したい部分」を描くことができます。

ステップ5:服・背景の仕上げと全体のトーン調整

人物の描き込みが終わったら、服や背景に色を乗せていきます。
背景は人物を引き立てる重要な要素であり、人物のメインカラーと同系色または補色を薄く滲ませると雰囲気が高まります。

人物画来ている「着物」が緑っぽいので「補色関係」にある赤っぽい色の背景にしました。

最後に少し離れた場所から作品全体を眺め、明暗のバランスやパーツの強弱を確認します。
必要に応じてハイライトを加えたり、影を少し描き足したりして画面全体を調整すれば完成です。

背景でこの人物画が「いきる」かどうかが決まると言っても過言ではありません。筆者は、「背景に作者の想いを込めるよう」にしています。

例えば、この依頼の時は、依頼主の好みに自分なりの解釈を付け加えて制作。とても喜んでいただきました。

水彩人物画でよくある失敗と綺麗に仕上げるコツ

水彩で人物を描く際によく遭遇するトラブルと、それを防ぐための解決策を把握しておきましょう。

肌色が濁ってしまう原因とクリアな発色を保つ方法

肌色が土色のように濁ってしまう最大の原因は、「パレット上で絵の具を混ぜすぎる(4色以上)」ことや「下の色が乾かないうちに次の色を重ねてしまう」ことです。

混ぜる絵の具は原則2〜3色にとどめ、パレットの上で完全に混ぜ切らずに紙の上で滲ませる工夫をしましょう。
また、重ね塗りをする際は、前の層が「完全に乾いてから」塗り重ねるルールを徹底してください。

下の層が生乾きの状態で重ね塗りを行うと、せっかく塗ったベースの色が溶け出して画用紙の上で汚れのように濁ってしまいます!必ず完全に乾いたことを確認してから重ねましょう。

水分のコントロールで滲み・境界線(エッジ)を活かす

水彩画は筆に含ませる水の量によって表情が大きく変わります。
水が多すぎると紙の上で予期せぬ水溜まりができ、乾いたときに輪郭線(バックラン)ができてしまいます。

ふんわりボカしたい部分は「ウェット・イン・ウェット(濡れた紙に塗る)」を使い、シャープな輪郭を残したい部分は「ドライ・オン・ドライ(乾いた紙に塗る)」を使い分けましょう。

ドラ美
水分の加減に迷ったら、筆を紙につける前にティッシュで少し水分を吸い取る癖をつけると水溜まりの失敗を防げます。

ティッシュならなんでもいいというわけではなく…。少し贅沢ですが、画面上の水分量を調整するときは、「エリエール・贅沢保湿」を使います。水彩紙から優しく水分を吸い上げてくれます。接地面の跡も残りにくいです。

人物の水彩画描き方に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 人物の肌の色がどうしても暗くなってしまいます。どうすれば良いですか?

A1. 水彩絵の具は乾くと少し薄く見えますが、塗り重ねすぎると暗くなります。
最初は「自分が思っているよりもかなり薄い(水をたっぷり含ませた)」肌色から塗り始めるのがコツです。

ほとんど「水」ぐらいでちょうどいいです。

Q2. 鉛筆の下書きが綺麗に消えません。上から塗っても大丈夫ですか?

A2. 絵の具を重ねた後は鉛筆の線が定着して消せなくなります。
描く際はHB以上の硬い鉛筆で薄く描き、柔らかい消しゴムで、塗る直前に不要な線を限界まで落としておきましょう。(先ほども申しましたが、筆者は鉛筆の線を「ワザと」残しておくのが好きです。人物の場合、その人が生き生きと躍動しているように思えるからです。)

筆者の愛用の消しゴムは、サクラクレパスの「Arch(アーチ)」です。練り消しより水彩紙を傷つけず鉛筆の線を消してくれます。

Q3. 顔が平面的になってしまいます。立体感を出すには?

A3. 「パーツ」ではなく「顔の凹凸(へこみ)」を意識して、暗い色をしっかり入れます。

  • へこみを意識: 鼻や唇を記号として描くのではなく、顔の側面、目のくぼみ、鼻の下、顎の下など、「引っ込んでいる部分」にしっかり影を入れます。
  • 出っ張りを残す: おでこ、鼻のてっぺん、頬の先端は明るいベースの色のまま触らずに残します。
  • コントラスト: 圧倒的に暗い部分(濃い影)を作ることで、光が引き立ち立体感が生まれます。

まとめ

水彩画で人物を描く際は、丁寧な下描きと水の量を活かした重ね塗りが成功のカギです。
肌色の混色はシンプルに保ち、完全に乾いてから陰影を重ねることで、透明感あふれる生き生きとした人物画が完成します。

まずは身近な写真をもとに、楽しく筆を走らせてみてくださいね。

人物画を透明感高く仕上げるポイント
  • 肌色の混色は基本2〜3色まで(混ぜすぎない)
  • 下書きの鉛筆線は練り消しゴムで極限まで薄くする
  • 重ね塗りは前の層が完全に乾いてからおこなう
  • 影の色には黒を使わず、青や紫をほんの少し混ぜる

とても参考になる「りんごの描き方」はこちら☝️

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