床の間に飾る掛け軸の言葉とは?選び方や季節・行事のTPOを解説

こんにちは、絵師の徳田智子です。
絵の道に入ってはや半世紀。

日本人絵師として日本の文化について広く世界に発信していきたいと思い、伝統的な美術品でもある「掛け軸」についてお伝えしていきます。

和室の象徴ともいえる床の間ですが、いざ掛け軸を飾ろうとすると「どんな言葉を選べばいいの?」「難しそうで敷居が高い」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。

実は、掛け軸の言葉(書)はルールさえ知っていれば、敷居が高いものではなく、毎日の暮らしや心を豊かにしてくれる素晴らしいインテリアになります。
この記事では、床の間に飾る言葉の選び方から、季節や行事(TPO)に合わせた掛け軸の嗜み方、初心者におすすめの言葉まで分かりやすく解説します。

ご自宅の床の間はもちろん、リビングなどの現代風のお部屋にも馴染む気軽な掛け軸の楽しみ方を見つけていきましょう!

この記事でわかること
  • 床の間に飾る言葉(掛け軸)が持つ意味と魅力
  • 初心者が自宅に合う言葉を選ぶ3つのポイントと現代的な飾り方
  • 正月や法事などTPOに合わせて選ぶおめでたい言葉・厳かな言葉
  • 四季の移ろいを感じる季節ごとのおすすめ言葉
  • 日常使い(普段掛け)にぴったりな心安らぐ代表的な禅語

床の間に飾る「言葉の掛け軸」が持つ魅力と基本的な選び方

掛け軸には絵画(画)と文章(書)の2種類がありますが、言葉が書かれた掛け軸は「一行書(いちぎょうしょ)」や「禅語(ぜんご)」と呼ばれ、古くから大切にされてきました。
床の間に言葉を飾る最大の魅力は、空間に凛とした緊張感を与えるとともに、住む人や訪れる人の心に深い気づきや安らぎを与えてくれる点にあります。

文字通り読むだけでなく、その言葉の背景にある意味や思想を味わうことで、日々の忙しさを忘れ自分と向き合う時間を生み出してくれます。
まずは基本的な言葉の選び方と、現代のお部屋に合わせた飾り方のコツを押さえておきましょう。

なぜ床の間に言葉(書)を飾るのか?言葉が持つ意味と役割

床の間に飾る掛け軸の言葉は、単なる「部屋の模様替え」ではありません。
その家に集まる人々へ向けた「主人のもてなしの心」や「願い・訓戒」を表現する重要な役割を持っています。

茶道の世界でも、床の間の掛け軸は最も重要な道具として扱われ、その日の茶会のテーマや主人の想いを伝えるものとされています。
ご家庭においても、家族の健康や平和を願う言葉、座右の銘を飾ることで、家全体に良いエネルギーをもたらす効果があります。

初心者でも迷わない!自宅に合う言葉を選ぶ3つのポイント

初めて言葉の掛け軸を選ぶ際は、難しく考えすぎず、以下の3つのポイントを意識してみましょう。
自分や家族の暮らしに寄り添う言葉を選ぶことが、長く愛着を持つためのコツです。

  • 心に響く直感的な意味で選ぶ:読んだ時にフッと心が軽くなる言葉や、前向きになれる言葉を選びます。
  • 飾る目的(TPO)で選ぶ:普段使い用か、お祝い事用か、季節感を楽しむ用かで分類します。
  • 書体や表装の雰囲気で選ぶ:力強い文字、やわらかい文字など、お部屋の印象に合ったデザインを選びます。
タイガ
友人が経営するショップの名前がきっかけで「日日是好日」の深みのある意味を知り、直感で探して購入しました。意味を知って選んだ言葉は、見るたびに思い入れが深まりますね。

和室の床の間だけでなくリビングにも馴染む現代的な飾り方

「本格的な床の間がない」「洋風のリビングしかない」という場合でも、掛け軸を諦める必要はありません。
最近では、現代の居住空間に合わせたコンパクトなサイズや、洋室の壁紙に馴染むモダンなデザインの掛け軸も豊富に揃っています。

リビングの壁面やチェストの上に小型の掛け軸を飾ることで、和モダンでおしゃれなアクセント空間を作ることができます。

ピクチャーレールや無傷でフックを止められる金具を活用すれば、洋室でも壁を傷つけずに気軽に掛け軸を楽しめます。

タイガ
我が家ではリビングのローボードの上に小さめの掛け軸を飾って「擬似床の間」を作っています。洋風の部屋にもすんなり馴染んで、とても素敵な和モダン空間になりますよ。

【TPO別】行事や慶弔に合わせて選ぶ床の間の掛け軸の言葉

掛け軸には、行事や慶弔といったTPO(時・場所・場合)に応じて掛け替えるマナーや慣習があります。
特別な日にふさわしい言葉を飾ることで、集まったゲストへのおもてなしや、節目のお祝い・供養の気持ちをより深く表現することができます。

正月・慶事(お祝い事)にふさわしいおめでたい言葉

お正月、結婚祝い、長寿のお祝い、新築祝いなどの慶事(めでたい席)には、開運や長寿、繁栄を願うおめでたい言葉(吉祥の言葉)を選びます。
赤や金があしらわれたおめでたい表装のものも多く、空間を一気に華やかにしてくれます。

  • 松樹千年翠(しょうじゅせんねんのみどり):松の木が幾年経っても緑を保つように、長寿と変らない価値を称えるおめでたい言葉。
  • 鶴舞千年樹(つるまうせんねんのき):長寿の象徴である鶴と松を組み合わせた、非常にめでたい意味を持つ言葉。
  • 開雲見日(くもをひらきてひをみる):悩みや迷いが消え去り、明るい未来(太陽)が開けることを願う言葉。
タイガ
お正月用に新調した掛け軸を親戚にお披露目した際、「若いのにセンスがある」と褒められたのが嬉しかったです。TPOに合わせて的確に選ぶ大切さを実感しました。

法事・命日など仏事で飾る厳かな言葉

法要、命日、お盆、お彼岸などの仏事(慶事の反対)の際には、ご先祖様への供養や感謝の気持ちを表す厳かな言葉を掛けます。
心を静め、仏教の教えや故人を偲ぶための言葉を選ぶのが一般的です。

  • 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ):浄土宗や浄土真宗などで用いられる六字名号。故人の冥福を祈り、仏様の慈悲に感謝します。
  • 南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう):日蓮宗で用いられる題目。
  • 日日是好日(にちにちこれこうじつ):法要の後の普段掛けとしても使われ、一日一日を精一杯生きる大切さを伝える言葉。
慶事用のおめでたい言葉や鮮やかな表装の掛け軸を、法事や命日などの仏事に飾ることはマナー違反となりますので注意しましょう。

名号(みょうごう)掛け軸や仏事についての掛け軸について詳しくはこちらの記事を☝️

お盆の床の間に飾る掛け軸の種類は?いつから飾るかと花や小物も紹介

【季節別】四季の移ろいを感じる床の間の掛け軸の言葉

日本には豊かな四季があり、床の間の掛け軸を通して季節の移ろいを楽しむ風習があります。
絵画の掛け軸だけでなく、言葉の掛け軸(書)においても、その季節の情景や情緒を想起させる言葉を選ぶのが粋な嗜みとされています。

春・夏におすすめの爽やかで生命力を感じる言葉

春は芽吹きや新しい始まりを感じさせる温かな言葉、夏は涼やかさや新緑の生命力を感じさせる言葉がぴったりです。
訪れる人に季節の訪れを知らせ、爽やかな気分を届けることができます。

  • 春水満四澤(しゅんすいしたくにみつ)=春の言葉:春の訪れとともに雪解け水が池や沢に満ち溢れるような、生命力と希望に満ちた春の言葉。
  • 清風払明月(せいふうめいげつをはらう)=夏の言葉:清らかな風が明月を吹き払うような、夏に心地よい涼しさと清々しさを感じさせる言葉。
  • 薫風自南来(くんぷうじなんらい)=夏の言葉:初夏の青葉を渡ってくる爽やかな風を感じさせる、夏の茶席などでも人気の言葉。

7月におすすめ:清風(せいふう) 、 白珪清風(はっけいせいふう)/ 意味は、暑い時期にふと吹いてくる、清らかで心地よい涼しい風のことです。

秋・冬におすすめの風情とぬくもりを感じる言葉

秋は豊かな実りや澄み切った空・月を愛でる言葉、冬は厳しい寒さの中にある温もりや、新年を迎える準備を感じさせる言葉を選びます。
しっとりと静かで深い味わいのある言葉が空間を引き締めます。

  • 月白風清(つきしろくかぜきよし)=秋の言葉:秋の夜の月が白く輝き、清らかな風が心地よく吹く静寂な秋の風景を表す言葉。
  • 霜月照清池(しもつきせいちを照らす)=冬の言葉:澄み切った冬の池に月光が差し込むような、冬ならではの静寂と美しさを表現した言葉。
  • 無事(ぶじ):年末によく飾られる言葉で、この一年を無事に過ごせたことへの感謝と祈りを込めた言葉。
タイガ
煎茶の先生から頂いた「清泉」を掛けるたびに心が洗われます。絵だけでなく文字の掛け軸で季節を表現するようになり、日本の四季の美しさをより深く再発見できました。

11月におすすめ:楓葉経霜紅(ふうようしもをへてくれないなり)/ 意味は、カエデの葉が霜を経て、さらに鮮やかな紅色に染まることです。

掛け軸の掛け方・しまい方の手順

掛け軸の選び方はわかってきたけれど、実際に掛け軸を掛ける方法やしまい方についてどうすればいいか、わからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?この章では、簡単に掛け方としまい方を説明していきます。

掛け方(矢筈・折れ釘・風鎮)

それでは、掛け軸の掛け替えの手順を説明します。

季節ごとの掛け替えの手間をできるだけ簡単にしていくには、専門の道具を使うことをお勧めします。掛け替えには、「矢筈(やはず)」を使いましょう。掛け替えがすごく楽になり、掛け軸を痛める心配もなくなります。

初心者でも扱いやすい片口(かたくち)です

掛け軸は、矢筈(やはず)を使用して、折れ釘(無双釘)に掛けます

掛け軸の下の部分「軸棒(じくぼう)」の部分に、風で揺れるのを防ぐ重りとして「風鎮(ふうちん)」をつけます。見た目を美しく整える装飾としても重要です。

専門的な掛け軸用の金具や道具についてはこちらを参考に!

床の間の掛け軸金具おすすめ5選!種類と失敗しない選び方を解説

しまい方(陰干し・巻き方・保管)

また、かけっぱなしにしておくと傷みの原因になります。

実は筆者も「年中掛け軸」の裏に黒カビを生やしてしまいました。発見した時は流石に「大変だ!どうしよう?!」と思いましたが、専門家に相談することで適切な処置をしていただき大事に至りませんでした。

ご参考まで、掛け軸のカビなどに対処してもらえる専門のサイトをご紹介します

掛け軸にカビが発生する原因とは?長持ちさせるカビ取りの方法を紹介 | 和室の襖・障子・畳・網戸の張替えお役立ち情報サイト「和の匠プラス」金沢屋

でも、そうならないように、陰干しをして、きちんとしまい、きちんと保管しましょう。

陰干しの手順とコツは、

  • 場所を選ぶ:直射日光が当たらない、風通しが良くて静かな室内で行う。
  • 吊るす時間:半日から1日程度(長く干しすぎない)。
  • 箱も乾かす:掛け軸を入れる桐箱や中の和紙も一緒に開いて乾燥させる。

注意するポイント

  • 日光は厳禁:太陽の光に当てると色あせや傷みの原因になる。
  • 強い風を避ける:エアコンの風が直接当たる場所や、風が強すぎる場所は避ける。
  • ホコリを落とす:巻く前やしまう前に、柔らかいハタキなどで軽くホコリを払う。

しまう時の巻き方は、

  • 掛け軸はかけたままで、軸先を持ってゆっくりと上に向かって巻き上げる
  • 左右のバランスに注意し、キツく締めすぎないように注意して、掛け軸の長さの半分ぐらいまで、そのまま柔らかく巻き上げる
  • 巻いた軸の真ん中を持ち、矢筈を使って掛け軸を自在掛け(釘)から外す
  • 風帯を(向かって左側の風体が下になるように)折りたたんでから、最後まで巻き上げる。この時、埃など払っておく

桐箱での保管方法は、掛け軸を巻き終えたら

  • 掛け軸に付いている紐(巻緒)を巻緒が当たる部分にあて紙をして、巻緒を手前に3回巻く
  • 掛緒の右下に巻緒を半折にして通し、通した巻緒の輪を掛緒の左上から通し、左右の巻緒の長さを調節。この時、緩すぎず、きつすぎないよう注意!
  • 巻緒が乱れないように揉み紙に包んで、桐箱に収納

紙製たとう箱(タトウの表記で販売しているサイトが多いです)が付いてる時は、付属のラベルにどんな掛け軸を入れたかを書いておくと便利です。

しまい方についてはこちらに詳しくあります☝️

床の間への掛け軸の飾り方としまい方|初心者にもわかりやすく解説!

日常使いにおすすめ!心に響く代表的な禅語・一行書の掛け軸の言葉

特別な行事や季節に関わらず、一年を通して普段掛け(日常使い)として飾れるのが「禅語」の素晴らしいところです。また、茶席でも好んで掛けられる言葉です。
禅語とは、禅宗の教えを凝縮した短い言葉であり、現代を生きる私たちのメンタルケアや座右の銘としても大いに役立ちます。

座右の銘にもぴったりな定番の禅語(日日是好日・和敬清寂など)

普段使いとして特に人気が高く、見るたびに前向きな気持ちになれる代表的な禅語をご紹介します。
言葉の意味を知ることで、毎日の生活の中に小さな気づきや心のゆとりが生まれます。

  • 日日是好日(にちにちこれこうじつ / ひびこれこうじつ):雨の日も風の日も、どんな日であっても二度とないかけがえのない一日であり、素晴らしい日であるという意味。
  • 和敬清寂(わけいせいじゃく):茶道の心得としても有名で、お互いを敬い、心を清らかにして静かな心を持つという人間関係の極意を表す言葉。
  • 一期一会(いちごいちえ):一生に一度の出会いとして、目の前の人や出来事を大切にもてなす心構え。

見るたびに心が安らぐ前向きな言葉

ストレスの多い現代社会だからこそ、ふと床の間を見上げたときに心がホッとする言葉を飾るのがおすすめです。
ネガティブになりがちな気持ちをリセットし、自分らしさを取り戻すきっかけを与えてくれます。

  • 知足(ちそく / 足るを知る):高望みをせず、今すでに持っている幸せや環境に感謝することの大切さを教える言葉。
  • 明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり):誰もが手にかけがえのない宝物(宝のような心)をすでに持っているという温かい言葉。
  • 本来無一物(ほんらいむいちもつ):執着するものは本来何もないのだから、思い煩う必要はないという心を軽くしてくれる言葉。
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「本来無一物」の掛け軸の前で正座すると自分の欲深さを反省でき、また気持ちを新たに日々の生活に励むことができます。言葉の力が心の支えになっています。

掛け軸の言葉に関するよくある質問(FAQ)

掛け軸を扱う際、初心者の方が抱きやすい疑問や不安についてお答えします。

Q. 意味が分からない難しい言葉を選んでも大丈夫ですか?

A. 全く問題ありません!最初は直感で「文字の形が好き」「雰囲気に惹かれる」で選んで大丈夫です。

掛け軸を飾った後に、書籍やインターネットで言葉の意味を少しずつ調べていくのも楽しみ方のひとつです。
意味を知ることで、より一層その掛け軸への愛着が深まっていきます。

筆者も始めは形から入りまして。この文字、「素敵だよね」なんて選んでいました。

Q. 季節の掛け軸はどのくらいの頻度で掛け替えるべきですか?

A. 基本的には「二十四節気(約2週間ごと)」や「月ごと(1ヶ月ごと)」の掛け替えが理想ですが、無理のない範囲で構いません。

四季の切り替わり(年4回)のタイミングで掛け替えるだけでも十分季節感を楽しめます。
また、湿気に弱いため、雨の日を避けて天気の良い乾燥した日に掛け替えるのが掛け軸を長持ちさせるコツです。

掛け替えの時期について詳しくはこちらの記事もお読みください☝️

床の間に飾る掛け軸の選び方!季節ごとの柄と掛け替え時期を解説
掛け軸は湿気や直射日光を嫌います。保管する際は風通しの良い乾燥した場所を選び、カビを防ぐ防虫香などを一緒に箱に入れて保管しましょう。

陰干しについてはこちらの記事も参考に☝️

お盆の床の間に飾る掛け軸の種類は?いつから飾るかと花や小物も紹介

しまい方について、詳しくはこちらのを参考に☝️

床の間への掛け軸の飾り方としまい方|初心者にもわかりやすく解説!

まとめ:お気に入りの言葉の掛け軸で床の間やリビングを彩ろう

床の間に飾る言葉の掛け軸は、単なる和風の伝統品ではなく、日常に彩りと心の安らぎを与えてくれるインテリアです。
季節や行事(TPO)に合わせた言葉の選び方を押さえておけば、自信を持ってお部屋に飾ることができます。

まずは「日日是好日」などの親しみやすい禅語や、一目見て心が惹かれた言葉から始めてみてはいかがでしょうか。
お気に入りの掛け軸をひとつ飾るだけで、いつものお部屋が特別な癒しの空間に変わりますよ。

要点まとめ
  • 言葉の掛け軸は空間を整え、住む人や訪れる人の心を豊かにしてくれる
  • リビングなどの洋室でもチェストの上などを活用して「擬似床の間」を楽しめる
  • 慶事・仏事・四季折々のTPOに合わせた言葉の選定が大切
  • 直感や文字の美しさで選び、後から意味を深く知っていくのも楽しみ方のひとつ

床の間をおしゃれに飾るコツは、こちらの記事を参考に☝️

床の間をモダンに!掛け軸の代わりにタペストリーでおしゃれに飾るコツ