素焼き鉢をアクリル絵の具でペイントする方法と剥がれ防止のコツ

こんにちは、絵師の徳田智子です。早いもので絵の道に入って半世紀。
アクリル絵の具を愛用して5年の歳月が流れました。

素焼き鉢は植物とよく馴染む素朴な風合いが魅力ですが、そのままでは色味がどれも似てしまいがちです。
そこにアクリル絵の具でペイントを施すと、世界に一つだけのオリジナル鉢に生まれ変わります。

とはいえ「せっかく塗ったのにすぐ剥がれてしまった」という失敗談も少なくありません。
この記事では、素焼き鉢にアクリル絵の具できれいに色をのせる手順と、剥がれを防ぐための下地処理・仕上げのコツまで、実際の作業工程に沿って詳しく解説していきます。

道具の選び方から失敗しやすいポイント、屋外に置く場合の注意点まで一つずつ整理しているので、この記事を読み終える頃には、初めてでも安心して素焼き鉢のペイントに挑戦できる状態になっているはずです。

素焼き鉢をアクリル絵の具でペイントするとどう変わるのか

素焼き鉢は焼成温度が低く、表面に細かい凹凸と吸水性がある点が特徴です。
この章では、なぜ素焼き鉢がペイントのキャンバスとして人気なのか、そしてなぜアクリル絵の具が選ばれるのかという理由まで踏み込んで説明します。

写真向かって左側:テラコッタの鉢 右側:素焼きの植木鉢

素焼き鉢とテラコッタ鉢の違い

素焼き鉢とテラコッタ鉢は、どちらも粘土を焼いて作られる点は共通しています。
ただし焼成温度や産地、仕上げの工程に違いがあり、テラコッタ鉢はより高温で焼き締められるため、表面がやや硬く吸水性が控えめな傾向があります。

この違いから、テラコッタ鉢は耐久性やデザイン性を重視する場合に、素焼き鉢は通気性や吸水性を重視する場合に適していると言えます。
どちらの鉢を選ぶかによって、下地処理の重要度も変わってくる点は押さえておきましょう。

作業内容素焼き鉢テラコッタ鉢
下地剤(プライマーやシーラー)の塗布◎ 塗料の吸い込み防止のため、しっかり塗布、剥がれ防止 ○ 塗料がのりやすいように軽く塗布

どちらにしても、下地処理をしておくと間違いありません。

アクリル絵の具を選ぶ理由

アクリル絵の具は水で薄めて扱えるうえに、乾燥後は耐水性の塗膜になるという特性を持っています。
油性塗料のようにシンナー臭がなく、室内でも作業しやすいことから、鉢のペイントに広く使われています。

100均のアクリル絵の具でもいいですね。たくさん使っても気になりません。

一方で、乾燥後は水を通さない膜になるため、素焼き鉢本来の通気性・吸水性を一部塞いでしまう点は理解しておく必要があります。

アクリル絵の具は、いろいろなものに描くことができるのでとても面白い素材です。そして、乾燥後は耐水性になり剥げれ落ちたりしません。乾燥後も艶があり、発色が良いいことも良い点です。乾燥速度が早いので、描画後の筆やパレットの取り扱いには注意が必要です。

詳しくは、アクリル絵の具の使い方のこちらの記事を参考に☝️

アクリル絵の具の使い方は?初心者が基本の色で描くコツを解説

ペイントを始める前に準備するもの

きれいに仕上げるためには、道具選びの段階で差がつきます。
ここでは最低限そろえておきたい道具と、仕上がりのクオリティを底上げしてくれる道具に分けて紹介します。

この章でわかること
素焼き鉢のペイントに必要な基本の道具と、あると便利な道具の違いがわかります。

必要な道具と材料リスト

最低限そろえておきたいものは以下の通りです。

  • 素焼き鉢(無地・未塗装のもの)
  • アクリル絵の具(複数色)
  • 筆・スポンジ・刷毛(デザインに応じて使い分け)
  • 下地材(シーラーまたはプライマー)
  • 紙やすり(表面を整えるため)
  • 仕上げ用のニスまたはトップコート
  • 新聞紙やビニールシート(作業台の養生用)

左上から:テラコッタの植木鉢(その下が白いシート)、スポンジ、筆洗、手前に来て刷毛、筆、アクリル絵の具(今回、100均のものも用意しましたが、筆者はお気に入りのターナー・U-35シリーズも使用します)、紙やすり、卵パックのリサイクルパレット、新聞紙

あると仕上がりが良くなる道具

マスキングテープがあれば、直線的な模様やボーダー柄をきれいに描き分けられます。
また、スポンジや使い古しの歯ブラシは、水玉模様やスパッタリング(絵の具を弾き飛ばす技法)に活用できます。

左側:マスキングテープ3種(細〜太いタイプ)、使い古した歯ブラシ、下は新聞紙。マスキングテープも100均でも購入することができます。

素焼き鉢の下地処理|剥がれを防ぐ最重要工程

素焼き鉢は通気性に優れ植物の育成に最適ですが、その吸水性の高さがペイントの剥がれを引き起こす原因になっています。
この章では、多くの人がつまずく「塗ったのに剥がれる」というトラブルを防ぐための、下地処理の具体的な工程まで踏み込んで解説します。

鉢を洗って乾かす

まず鉢の表面についたホコリや土、油分をしっかり洗い流します。

洗浄後は生乾きの状態でペイントを始めず、鉢の内部までしっかり乾燥させることが欠かせません。

素焼き鉢は内部に水分を吸い込みやすいため、表面が乾いて見えても中心部が湿っていることがあります。生乾きのまま塗装すると、後から塗膜が浮いて剥がれる原因になるため、丸一日以上しっかり乾燥させましょう。

表面を整えるサンディング

鉢の表面に大きな凹凸やバリがある場合は、紙やすりで軽く整えておく(サンディング)と絵の具の乗りが良くなります。

削りすぎると鉢自体が薄くなり割れやすくなるため、あくまで表面を滑らかにする程度にとどめるのがポイントです。

紙やすり(サンドペーパー)の番手は「#320 ~ #400」ぐらいの、手触りをツルツルにしたり、塗装のノリを良くしたりするための「最終仕上げ用」がおすすめです。

シーラー(下地材)を塗る理由

シーラーとは、絵の具を塗る前に下地として使う密着剤のことです。

素焼き鉢は吸水性が高く、絵の具の水分やバインダー成分をどんどん吸い込んでしまうため、シーラーで表面をコーティングしてから塗装することで、色ムラや塗料の剥がれを大きく減らすことができます。

シーラーとプライマーは呼び方が違うだけで、どちらも「下地材」を指すことが多い言葉です。製品によって成分や用途が微妙に異なるため、購入時はパッケージの説明を確認しましょう。

こちらはホームセンターで仕入れた、和信ペイントの環境への負荷が少ないサンディングシーラー(水性ニスの下塗り)。

テラコッタの鉢にこのサンディングシーラーを塗布しました。

十分に乾燥させましょう。右側、素焼き鉢はしっかりシーラーを塗布しています。

右側の素焼き鉢の場合、左側のテラコッタ鉢よりシーラーを塗り重ねる回数を、2、3回増やすといいですね。そうすれば、色むらや塗料の剥がれをより一層防げます。

アクリル絵の具での塗り方の手順

下地処理が終わったら、いよいよ色を乗せていく工程に入ります。
この章では、ベースカラーの塗り方から模様の描き方、重ね塗りのタイミングまで、実際の作業順序に沿って説明します。

基本の塗装手順
  1. ベースカラーを全体に塗る
  2. 完全に乾燥させる
  3. 模様やデザインを描き込む
  4. 必要に応じて重ね塗りをする
  5. 最終乾燥させる

ベースを塗る前に「アイデアスケッチ」をして、出来上がりのイメージを固めます。

このイメージに合うようにベースカラーも重ねていきます。

ベースカラーを塗る

刷毛や大きめの筆を使い、鉢全体に均一にベースカラーを乗せていきます。

アクリル絵の具をパレットで溶きます。アクリル絵の具は1度乾燥すると再び水には溶けませんので、パレットは紙の使い捨てパレットが便利です。筆者は使い捨てに抵抗があるので「卵パック」を集めてそれを「リサイクルパレット」として使用しています。

リサイクルパレットについては、こちらの記事も参考に☝️

【初心者向け】アクリル絵の具の基本的な使い方と楽しく描くコツ

今回、100均のアクリル絵の具(赤・青・黄)で、ベースカラーを整えます。緑色は「青と黄」で混色して作ります。

一度に厚塗りをすると乾燥にムラが出やすいため、薄く塗って乾かす工程を2〜3回繰り返すのが基本です。刷毛を使用します。

模様やデザインを描き込む

テラコッタの鉢は、ベースカラーも3色で変化をつけました。100均のアクリル絵の具の黄と青の混色で作った緑のバリエーションで2部分に塗り分けました。

下から、黄と青が同じぐらいの分量で作った緑、赤を混ぜてグレイッシュな緑です。一番上の緑色は、100均の混色では色が出ませんでしたので、ターナーアクリル絵の具 U-35シリーズの「パーマネントグリーンライト」を使用しました。

素焼きの鉢にもこのカラーを使用して、お部屋で一緒に飾った時に、統一感が出るようにカラーを一部揃えてみました。

テラコッタの鉢も、素焼きの鉢も、十分な乾燥を経て、3回の重ね塗りを終了。

ベースカラーが完全に乾いたら、水玉やボーダー、グラデーションなど好みの模様を描き込んでいきます。この時は、100均の3色では出せないカラーをターナー U-35シリーズの「ミディアム マゼンタ、プライマリーイエロー、コバルト テール、ウルトラマリンブルー」を使って表現します。
細かい模様は面相筆、大きな模様はスポンジや太めの筆を使うと、それぞれの質感を活かした仕上がりになります。

カノン
最初は難しく考えていましたが、持ち手付のスポンジを使うと不器用でも意外ときれいな模様になることに気づきました。

重ね塗りと乾燥のタイミング

アクリル絵の具は表面が乾いたように見えても内部まで完全に定着するには時間がかかります。一般的に、表面は数十分から数時間で乾きますが、塗膜の中の水分が完全に抜けて樹脂が安定する(硬化する)までには数日から一週間ほど必要です。

この完全乾燥を待たずに次の工程に進んでしまうと、後からトラブルにつながりやすいため注意が必要です。

乾燥が不十分な状態で上からニスなどを塗ると、中に閉じ込められた水分が逃げ場を失い、塗膜を浮かせてしまうことがあります。特に厚塗りをした部分は、見た目以上に内部に水分が残っているため、焦らず十分な乾燥期間を置きましょう。

塗装後の仕上げとコーティングで長持ちさせる

色を塗り終えたら、最後に保護のためのコーティングを行います。
この章では、ニスとトップコートの違いや選び方、屋外に置く場合に気をつけたいポイントまで具体的に解説します。

ニス・トップコートの選び方

トップコートは薄い膜で表面を保護する仕上げ剤、ニスは厚みのあるしっかりとした膜で素材自体をコーティングする仕上げ剤です。

トップコートは、スプレータイプが多く、比較的薄塗りです。下地や塗装を溶かしにくいのが特徴です。

一方、ニスは液タイプで、厚くコーティングできることがポイントで、特に艶ありコーティングはかなり艶がでます。
刷毛で全体的に薄く重ね塗りをしていき、ムラができないように塗ることがポイントです。

ニスは大きく分けると「油性ニス」と「水性ニス」の二種類が有りますが、アクリル絵の具を使う場合は、両方のニスを使うことができます。
屋内で飾る場合は扱いやすい水性ニスが選ばれやすく、艶あり・艶消しの好みに応じて仕上がりの印象を調整できます。

艶消しはこちら⬇️

艶ありはこちら⬇️

艶ありニスは重厚感が出ますが、素焼き鉢本来のマットな質感を活かしたい場合は艶消しタイプの方が相性が良い場合があります。仕上がりのイメージに合わせて選びましょう。

臭いの少ない水性ニスにしました。

屋外に置く場合の注意点

屋外で使用する鉢には、耐候性や耐久性に優れた屋外用の製品を選んで仕上げることが大切です。

お手軽D.I.Y.用の屋内外兼用タイプ。水性で低臭なのが良いですね。

雨風に直接さらされる環境では、室内用のニスだけでは塗膜が劣化しやすいため、屋外用と明記された保護剤を選ぶようにしましょう。

また、完成後は「直置きを避ける」、「梅雨の時期は軒下に入れる」など、雨・湿気対策をお願いします。

素焼き鉢ペイントでよくある失敗と対策

ここでは、素焼き鉢のペイントで特につまずきやすい2つのトラブルについて、原因と対策を整理します。

塗料が剥がれる原因

塗料が剥がれる主な原因は、下地処理の不足と乾燥不足の2つに集約されます。
シーラーを塗らずに直接絵の具を乗せたり、完全乾燥を待たずに次の工程に進んだりすると、塗膜が定着せず剥がれやすくなります。

過去の失敗です。

急いで仕上げようとすると失敗につながりやすい工程です。特に「洗浄後の乾燥」「下地材の乾燥」「絵の具の完全乾燥」の3つのタイミングは焦らないようにしましょう。

カビや水染みが出る原因

素焼き鉢は吸水性が高いため、水やりのたびに鉢自体が水を吸い込みます。
下地処理が不十分なまま屋外や多湿な場所に置くと、鉢の内部に水分がこもり、カビや黒ずみが発生しやすくなります。

鉢底の水抜き穴からの浸水はコーティングだけでは防ぎきれません。受け皿にたまった水はこまめに捨てる、風通しの良い場所に置くといった管理も合わせて行うと安心です。

筆者が実際にペイントしてみた作品紹介

ここまで解説してきた手順を踏まえて、筆者が実際に「テラコッタ鉢と素焼き鉢」をペイントした作品を紹介します。

素焼き鉢のベース乾燥後、ジェッソで下の色が出ないように地塗りしました。これで、黄色やピンクなどの色をおいても、下の緑が影響することはありません。

使用した色と道具

部屋が汚れないように「シート」と新聞紙を床に敷いて対応しました。

もちろんパレットは「卵パック」の「リサイクルパレット」

ベースカラーは、先ほど紹介した100均のアクリル絵の具「赤・青・黄」の3色でなんとか、緑のバリエーション2種類(下の2箇所)は作り刷毛で塗りました。

しかし、上段の明るい緑はやはり愛用の「ターナー・U-35シリーズ」から、パーマネントグリーン ライトで塗りました。柄の方は、ミディアム マゼンタ、プレミアムイエローをメインで使用。アクセントにウルトラマリンブルー ライト、コバルト テールを使用。

筆は、ベースカラーの時はハケでしたが、模様の時は、愛用の「サクラクレパス・ネオセブロン」の0号・6号・14号丸筆を使用しました。

仕上がりと使ってみた感想

100均のアクリル絵の具も見た目は遜色ないのですが、実際にパレットに出してテラコッタ鉢に塗っていくと、粘着力が弱いように思いました。ベースカラーに使用したので、劣化が早いかもしれません。経過を見守る必要があります。

カノン
完成した瞬間は達成感がありましたが、実際に植物を植えて数週間使ってみて初めて気づいたこともありました。

こちらの鉢は、ベースカラーに100均の青と黄色で作った緑を使用しているので、注意が必要です。

ハートに使った赤色が少し心配ですが、面積が狭いのでこちらの鉢はそれほどでもないかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 素焼き鉢はアクリル絵の具以外の塗料でも塗れますか?
A1. 水性塗料やミルクペイントなど、屋外用に作られた塗料でも塗装は可能です。ただし塗料によって下地処理の方法や必要な乾燥時間が異なるため、使用する製品の説明を確認しておきましょう。

Q2. 塗装した鉢に直接植物を植えても大丈夫ですか?
A2. コーティングまで済ませていれば植え付け自体は可能ですが、鉢の内側まで塗装してしまうと素焼き鉢本来の通気性が損なわれる場合があります。塗装は外側のみにとどめるのがおすすめです。

塗装した鉢には、季節の花や植物、例えば、クリスマスなら「ポインセチア」、年末年始なら「葉牡丹」など、インテリアとしてお部屋やお庭を彩ってくれる植物を筆者は植えています。

Q3. 失敗して塗料が剥がれてしまった場合はやり直せますか?
A3. 剥がれた部分を紙やすりで軽く削り、汚れを落としてから、再度シーラーを塗り直すことでやり直しが可能です。

まとめ|素焼き鉢ペイントを長く楽しむために

素焼き鉢へのアクリル絵の具ペイントは、下地処理と乾燥時間さえ丁寧に守れば、初めてでも十分きれいに仕上げられる作業です。

洗浄・乾燥・シーラー・ベースカラー・模様描き・コーティングという流れを一つずつ守ることが、剥がれやカビを防ぐ一番の近道になります。

押さえておきたい3つのポイント
  • 塗装前は鉢を完全に乾燥させる
  • シーラーで下地を作ってから色を乗せる
  • 屋外に置く場合は屋外用のコーティング剤を選ぶ

どこにでも売っている、誰でも知っているデザインに飽きたらなない「オリジナリティ」を求めるあなたには「自分だけの」オンリーワンの植木鉢を造り出してみるのも悪くないのではないでしょうか?

素焼き植木鉢にペイントすることに違和感を覚える人もいるかもしれません。素焼きの素朴さ、ナチュラルな雰囲気が好きな方も大勢いらっしゃると思います。そんな時は、好きな柄を入れてみてはいかがでしょう。ワンポイントだけでも印象が全く変わります。

素焼きの良さを活かして、全体にペイントするのではなく「一部分」にだけペイントするのも、とてもオシャレだと思います。

本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。感謝です。

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